和工が「建築甲子園」入賞 つながり評価

建築を学ぶ全国の高校生が競う「建築甲子園」で、県立和歌山工業高校(和歌山市西浜)建築科3年生の9人が提案した作品「繋がりのその先へ」がベスト11に選ばれ、入賞した。同校で表彰式が行われ、県建築士会の池内茂雄会長から生徒に賞状と副賞が贈られた。

日本建築士会連合会と都道府県建築士会が主催。2010年に始まり、今回で13回目。建築教育課程のある工業高校や工業高等専門学校の生徒らがチームを組み、毎年異なるテーマを基に建築物のアイデアを図面や模型で提案する。

今回のテーマは「地域のくらし―これからの地区センター」。人口減少や空き家の増加とともにコミュニティセンターの在り方が問われる中、生徒が興味を持つコミュニティーを考え、その核となる地区センターを募った。

本年度は35校が参加。11月の作品審査で選出された同校を含むベスト11校が、12月の最終審査に進んだ。各校がプレゼン動画を提出し、富山県立富山工業高校が優勝。準優勝に石川工業高等専門学校の作品が選ばれた。

県立和歌山工業高校の生徒らは、和歌浦地区の明光商店街で現地調査をし、少子高齢化をはじめ、利用者や販売物品の減少など、地域の問題点を見つけて「商店街の中の地区センター」を提案した。

センター内には、高齢者と子どもに新たなつながりが生まれるよう、「体験施設」「おじおば食堂(子ども食堂の高齢者版)」「子どもの放課後の遊び場」を設計し、コミュニティーの活性化を目指した。

また、商店街内で売れ残った食品は同センターで調理して提供したり、体験施設で加工食品を作ったりすることで食品ロスの削減効果も期待。定期的な集まりにより、孤独死の防止や脳の活性化など、地域住民がみんなで助け合い、住み続けられるような地区センターを設計した。

表彰式で池内会長は「動線がうまく設計されていて、個々の建物のデザインも素晴らしい。よくまとまっていた」とたたえ、3年の合屋優人さん(18)は「使いやすい建物になるよう、配置や動線を工夫した。楽しかった」と笑顔。

今春から鳥取の米子工業高等専門学校建築科に編入する市原広菜さん(18)は「この経験を生かして、建築文化や歴史などの研究をしたい」と話した。

最新技術使い優勝へ 2年生に会長賞贈る

県内で建築科がある高校は同校のみ。同科の2年生6人も地域の銭湯「今福湯」を地区センターとして設計し「いつもの湯」という作品で県予選に挑戦したが、先輩の作品にかなわず同コンテストには出場できなかった。

2年生の提案を高く評価した県建築士会は今回、特別に会長賞を設定。この日、池内会長が生徒らに賞状を手渡した。

先月、同校には総合建設業の㈱小池組(和歌山市六番丁)から最先端技術の3D設計支援ソフトウェア「BIM(ビム)」が貸与されており、来年度からは月に1~2回程度、同社の社員が同校で実践的な講習を開く予定となっている。

建築科の生徒らは基礎からBIMの使い方を学んでいくといい、2年生の大島サムソンリーさん(16)は「来年はBIMを使って、建築甲子園で優勝を狙いたい」と意気込んだ。

入賞した3年生の皆さん

入賞した3年生の皆さん