500グラムを超える「太天柿」
前号では、平核無柿を硫黄で燻蒸して作る、ようかんのような食感の「あんぽ柿」を取り上げた。柿のシーズンの最後に楽しめる柿として、干し柿にして食べられる「愛宕柿」や「蜂屋柿」を取り上げたが、加工せずに食べられる晩生型の柿がある。今週は「太天柿(たいてんがき)」を紹介したい。
太天柿は、不完全甘柿である「黒熊柿」に完全甘柿の「太秋柿」を交配して作られたもの。1993年に農水省の果樹試験場で選抜育成され、2009年に登録された比較的新しい品種である。太天柿の名は「天から授かった素晴らしく大きな果実」という意味から付けられたという。
太天柿は渋柿であることから脱渋が必要。果形は平核無柿のように扁平だが、角には丸みがある。特徴は果実のサイズ。富有柿のおよそ1・5倍の500~600㌘で、これまで取り上げた柿の中で最大のサイズといって過言ではない。
食してみると果汁が多く、甘さは富有柿と同程度。サクサクとした食感だが熟すにつれて柔らかくなる。果実の中央に近づくほど茶色に色づいている。
2019年の農水省統計によると、愛媛県で5・1㌶の栽培面積があり、その他の都道府県の記載はないが、筆者はかつらぎ町内の産直市場で購入した。わずかながら和歌山県内でも栽培されている。
収穫は11月上旬ごろから。脱渋後に出荷されることから、最盛期は11月中旬から12月上旬にかけて。柿のシーズンを締めくくる太天柿。一際目立つ大きな柿を見つけたら、ぜひご賞味いただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)