香り高く食味に優れた「紀の香」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

前号では、色鮮やかで大きな果実が特徴の和歌山県オリジナル品種「まりひめ」を取り上げた。今週は、まりひめに次ぐ、和歌山県オリジナル品種である「紀の香(きのか)」を紹介したい。
紀の香は、県農業試験場が「かおり野」を母親、「こいのか」を父親として交配し、2012年に育成を始めた品種。4年間の選抜を経て16年に品種登録されている。名前は、紀州の香り高いいちごで、和歌山を代表する品種になることを願い、付けられたという。
特徴は収穫時期が11月中旬と早く、クリスマス商戦に十分対応できること。年間を通しての収穫量(年内収量)も「まりひめ」や「さちのか」より多く、収益性に優れている。また、炭そ病という病気に対する耐性がまりひめより強く、さちのかの同等で、育てやすいものとなっている。果実の大きさはさちのかより大きく、まりひめより小さい。まりひめと比べ果実の色は明るい赤色。切ってみると赤いのは外周だけで、中は白い。
食してみると、名前の由来にもあるように香りが良く、適度な酸味があり、爽やかな食感。糖度はまりひめやさちのかと同等である。かみ応えを感じるほど果実はしっかりとしているが、硬過ぎず、柔らか過ぎない適度な硬さ。
まりひめと同様に栽培は和歌山県内に限られるが県内各地に広がり、まりひめに次ぐブランド品種として期待されている。
まりひめと比べると、存在感は薄いかもしれないが、目にする機会が確実に増えている品種。香り高く、甘味や酸味にも優れた紀の香を、ぜひご賞味いただきたい。(次田尚弘/和歌山市)