県のオリジナル品種「まりひめ」

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前号では、しっかりとした甘味が特長の「章姫(あきひめ)」を取り上げた。今週は「章姫」と「さちのか」を交配してできた、和歌山県のオリジナル品種「まりひめ」を紹介したい。
まりひめは、和歌山県農業試験場が育成した品種で、2002年度に早生で豊産性のある章姫を母親とし、コクのある食味で日持ちが良いさちのかを父親とし交配。4年間の選抜と品種検討会、適応試験を経て、2010年に品種登録された。紀州の伝統工芸品である「紀州てまり」にちなみ、まりひめと命名したという。
まりひめの特徴は、開花が11月初旬ごろ、収穫開始が12月上旬ごろと、さちのかと比べ2週間以上早いこと。さちのかの収穫は12月下旬でクリスマスの需要に対応することが難しいが、まりひめは収穫が早く、市場のニーズに応えられる。また収穫量が多く、4月までの総収量はさちのかより2割以上で、農家の収益性にもつながっている。サイズが大きいことも特徴で、販売可能な収穫量に占める13㌘以上の正形果収量の割合(上物率収量)は80%以上と高く、販売される果実の平均の重さは約19㌘と、さちのかの約15㌘程度と比べて大きくなっている。
果実の特性としては、肩部がやや丸みを帯びた円すい形をしており、低温期でも鮮やかに着色し光沢がある。糖度はさちのかと同等で章姫より高い9度以上。酸度は章姫より高く、さちのかより低い。果肉の硬さは章姫より硬く、さちのかより柔らかくなっている。
まりひめの栽培は和歌山県内に限定。和歌山県いちご生産組合連合会から利用許諾を受け、195戸の農家が約20㌶のハウスで栽培。12月上旬から5月上旬ごろまで出荷される。
県内では目にすることが多いが、県外での販売は少ない模様。和歌山県が誇るブランド品種として広く親しまれることを期待したい。(次田尚弘/和歌山市)