四代目乙姫に土山さん 紀三井寺の千日詣
龍宮の乙姫が龍灯をささげて来山するという紀三井寺(和歌山市)の伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」が8月9日、コロナ禍での中止を経て、4年ぶりに行われる。オーディションにより、四代目乙姫役に県立医科大学医学部3年の土山夏未さん(20)が決まり、乙姫と共に行脚する女官役4人、一行を迎える巫女(みこ)役2人も選ばれた。
紀三井寺では毎年8月9日、一日の参詣で千日分の功徳が得られるという「千日詣」が行われており、乙姫の伝説が由来となっている。1253年前の奈良時代、唐から日本に渡り、紀三井寺を開いた為光上人が大般若経を写経した際、乙姫が現れて観音霊場の建立を喜び、毎年の同日に、海の中でも消えない龍灯を献上しに、龍宮から訪れると話したと伝えられている。
「龍宮乙姫龍灯献上行脚」は、この伝説をより広く知ってもらい、地域活性化につなげようと、2017年に初めて実施。18年には舞踊団体代表や会社役員らが参加する実行委員会を立ち上げ、継続してきたが、コロナ禍により20~22年の3年間、中止を余儀なくされた。
今回はオーディションを5月14日に行い、6月4日に乙姫役をはじめ出演する7人を発表。女官役には、和歌山市の会社員、山本千晴さん(25)と村上実優さん(21)、紀の川市の高校1年生、西上明花里さん(15)、同2年の山本裕梨さん(16)の4人、巫女役には、和歌山市の会社員、前田歩美さん(21)、同市の高校1年生、相坂璃音さん(16)が決まった。
乙姫役の土山さんは、幼い頃からミュージカルスクールで学び、龍宮乙姫龍灯献上行脚についてはユー・チューブで知り、携わってみたいと思い応募。「選ばれて信じられないくらいうれしい。乙姫は優雅で美しく、一本芯の通った女性だと思う。厳かさや威厳も表現できるように頑張りたい」と決意を話す。
女官役の山本千晴さんは「貴重な機会に参加できる。見る人の心に残る行脚にしたい」、村上さんは「和歌山が大好きで応募した。盛り上げられるよう頑張りたい」、西上さんは「将来はダンスやミュージカルの世界を目指している。きれいな踊りを見せたい」。巫女役の前田さんは「とても緊張しているが、乙姫を迎える役をしっかり果たしたい」、相坂さんは「文化継承に携わることがしたかった。精いっぱいのことをしたい」とそれぞれ意気込む。
紀三井寺の前田泰道貫主は、オーディションのレベルが高く、審査が紛糾したことを紹介。「一日で千日の功徳を届ける大事な役目をされる皆さんこそ、千日分の功徳を得ていただきたいと願っている」と出演者に呼びかけた。
行脚の振り付けや演出、舞踊の指導は、和歌山オリエンタルダンス協会代表理事で、初代乙姫を務めたエヴァ香陽さんが担当する。出演者は発表の後、和歌山市内のエヴァさんのスタジオで初練習。エヴァさんは、これまでも出演者の指導をした経験から「本番までの2カ月で、皆さん大きく成長していくはず。それを見るのが楽しみ」と話していた。