背筋伸ばし大きな声で 和大で能の講義
音楽科の教員を目指す大学生に多様な音楽に触れてもらおうと、和歌山大学(和歌山市栄谷)は21日、同市の重要無形文化財保持者の観世流能楽師・小林慶三さん(91)を講師に招き、能についての講義を行った。
小林さんの講義は2013年から行われ、ことしで10年目となる。教育学部の菅道子教授と上野智子准教授が担当する講義の一環で、中学校や高校の音楽科教員を目指す学生が受講している。
この日は、ことし2回目の講義を実施。主に3回生の7人が出席し、中学校の音楽の教科書に採用されている「敦盛」の謡(うたい)を中心に学習した。
小林さんは、意味や音階、表現、伝統芸能における男女の発音の違いなどを解説。丁寧に手本を示しながら指導した。また、声を出すときの姿勢について強調。学校に指導に行くと、みんな背筋が丸くなっていると話し、「気持ちを入れて背筋を伸ばし、大きい声を出すように子どもに声をかけてほしい」と伝えた。
菅教授は「能は実際に体験すれば、面白く、心が揺さぶられる。先生になったら、能や日本文化の面白さを子どもたちに伝えてほしい」と話し、鍵盤楽器を専門に学ぶ、3回生の池田翔さん(21)は、「発声方法や体の使い方を学べた。将来、より深い学びを子どもたちに教えられると思う」と笑顔だった。
授業の後半には、日本の伝統文化に触れてもらおうと、ベトナムやブラジル、韓国などの留学生6人も参加。共に「敦盛」を謡い上げた後、能の様式で、出身地と名前、留学生であることを自己紹介した。
日本語や日本文化を母国に伝えるためにブラジルから留学している、ジュリア・バルベルデさん(23)は、「初めて体験したが、心を込めて感情を表すのが面白かった。歌舞伎なども見てみたい」と意欲的。
小林さんは、能を日常生活に近づけたいとし、「留学生の熱心な様子に感心した。母国に帰っても、能が面白かったと伝えてほしい」と話した。
教育学部の受講生は、10月8日に同市和歌浦南の片男波公園野外ステージで開かれる、「第24回和歌の浦万葉薪能」の前に、「敦盛」の謡の一部を発表する。