和歌山発が拡大 ウフルの「応急給水ポータル」
IT企業の㈱ウフル(本社=東京都港区、園田崇史代表取締役社長CEO)のデジタルマップ「応急給水ポータル」が6月から、大阪府豊中市に導入された。断水時の給水所の給水残量や混雑状況などの情報がリアルタイムで分かるサービスで、和歌山市の六十谷水管橋崩落に伴う大規模断水の際、同社が緊急開発したもの。市民生活を助けた実績のある〝和歌山発〟の取り組みが、他府県へと広がり始めている。
地震や台風をはじめ自然災害などによって断水が発生した場合、自治体が学校などの公共施設に開設する応急給水所では、被災した住民らが殺到し、長時間にわたり給水を待つ列ができ、並んでいる間に水がなくなるなどの混乱が起きることがある。
また、自治体の情報発信は、給水所の場所や受け付け時間をホームページなどで知らせる程度にとどまることも多く、問い合わせ窓口は住民対応に追われる事態が起こる。
「応急給水ポータル」は、給水所の位置をデジタルマップ上で表示し、給水残量や混雑状況、次の給水車が到着する予定時間など、自治体職員が現地で更新する情報をタイムリーに住民に発信することができる。専用アプリなどは不要で、インターネットにアクセスすれば誰でも簡単に利用でき、混雑の緩和や自治体職員の対応業務の軽減などにつながる。
開発のきっかけは2021年10月3日、六十谷水管橋が崩落し、和歌山市北部の約6万世帯(約13万8000人)が断水したこと。同社は5日からのわずか48時間で「応急給水ポータル」を緊急開発し、7日から市を通じて市民への提供を開始。応急給水が終了するまでの5日間で6万3000件超のページ閲覧数があり、多くの市民に利用された。
短期間の開発が可能だった背景として園田CEOは、ゼロから作るには時間が必要なデータプラットフォームがすでに構築され、同市との信頼関係、データ連携の実績があったことを挙げる。
ウフルは18年10月に白浜町に拠点を設け、持続可能な社会を目指し、県内自治体や企業とも事業を展開。同市とは、スマートフォンを活用した予約制のテイクアウト販売システムを、中央卸売市場で導入するなどしてきた。
こうした水管橋崩落以前からの連携を基に「応急給水ポータル」は迅速に開発され、同市職員や市民の利用にとどまらず、給水支援に訪れた豊中市職員も利便性を実感し、今回の導入につながった。
平時には、調査や清掃が行われている上下水道のエリア、内水氾濫ハザードマップなどの情報を表示し、防災意識の向上にも役立てる。
ウフルには他の自治体からも複数の問い合わせがあるとのことで、和歌山の課題を契機に生まれたサービスを、より多くの地域で展開することを目指す。
園田CEOは「和歌山にはさまざまな社会課題があるが、和歌山をまず持続可能にすることが普遍的なソリューション(課題解決)につながり、日本中、世界で展開できるものになるはず」と話している。