教育者の青柳昌宏さん 県立図書館で展示
和歌山県ゆかりの教育者で、生涯にわたって自然を観察、探究し続けた青柳昌宏さん(1934~98)を紹介する展示が、和歌山市西高松の県立図書館で開かれている。自然保護教育・環境教育の先駆者としての功績を紹介。青柳さんの長女、内田啓子(あきこ)さん(60)=東京都=は「父が亡くなり、ことしで25年。父の原点である和歌山に、こういう人がいたことを知ってもらいたい。父の先駆的な取り組みが若い人につながっていってほしい」と話している。
東京で生まれた青柳さんは戦時中に粉河町(現紀の川市)に縁故疎開し、高校時代までを過ごした。東京教育大学卒業後は「自然豊かな所で生物を教えたい」と、県立粉河高校の非常勤講師、和歌山市立西浜中学校の常勤講師となり、1961年に県立那賀高校の教諭として着任。朝の1分間スピーチやコーラス、登山など生徒の自主性を重んじた先駆的な取り組みを行った。
生物部の顧問を務め、池のアメンボの生態観察で1965年に日本学生科学賞を受賞。5年連続で入賞を果たしている。また、1968年には第1回県教育賞に輝いた。
その後、日本とニュージーランドの南極地域観測隊に参加。日本で初めてペンギンの生態研究を本格的に行い、自然観察の手法の提唱、自然保護教育の実践といった先駆的な活動を行った。
今回の展示は小学校2年生まで粉河で暮らし、現在は東京の博物館で働く長女の内田さんの提案によるもの。「父の遺品を整理していたら学術的に貴重なものがあり、後世の人に活用してもらいたい」と同館に申し出た。
会場では青柳さんの功績を振り返るパネルや、自筆のスケッチ原稿、使用していた研究道具、著書などを展示。初日となった1日には内田さんによる展示解説が行われた。
青柳さんの教え子、貴志川町の武本緑さん(75)と松浦礼子さん(75)も来場。高校1年生の時に担任だったといい、熱心に耳を傾けていた。「60年前に先生から初めてDNAのことを聞いた。今から考えると最先端の生物を教えてもらっていたんだと思う」と振り返り、「先生は朝の1分間スピーチで、全員に自分の思うことを人前で話させた。そのおかげで自信がつき、今も人前でしゃべることが苦にならなくなっている」と感謝していた。
青柳さんのペンギンに関する著書を読み、ファンになったという大阪市の松島佳世さん(60)は「改めて和歌山の自然が先生を育んだというのがすごくよく分かった」と熱心に見入っていた。
展示は11月2日まで。15日から一部資料を入れ替えて展示予定。休館日は月曜日(祝・休日の場合は開館し、次の平日)。問い合わせは同館(℡073・436・9500)。