ミカン科の落葉低木「山椒」
前号では、産地におけるこの時期の風物詩といえる「摘果メロン」と、その味わい方について取り上げた。この時期に出回る和歌山県ならではの農作物として忘れてはならないものが「山椒(サンショウ)」である。今週から山椒について紹介していきたい。
山椒は、ミカン科サンショウ属の落葉低木。雑木林などに自生し、別名を「ハジカミ」という。一般的に鰻料理などに振りかける粉状の香辛料としてのイメージが強いが、和食料理に添えられる山椒の若葉は「木の芽」と呼ばれる。
山椒の名の由来は、山の辛みを表したものとされる。「椒」には芳しい、辛味という意味がある。原産地は東アジアとされ、国内全域に加え、朝鮮半島や中国にも分布する。
樹高は1~3㍍と低木。葉の長さは10~15㌢で青々とした美しさが特徴。花期は4月から5月ごろで収穫期は9月から10月ごろ。
この時期(6月から7月)に販売される果実は未熟なもので「青山椒(アオザンショウ)」といわれる。佃煮やちりめん山椒として味わうのが一般的で、鰻料理などに振りかける「粉山椒(コナザンショウ)」は、秋に収穫される熟した実の皮を加工し乾燥粉末にしたもの。香辛料として鰻の臭みを消す用途や、七味唐辛子の材料として重宝される。
山椒の樹皮や果皮は生薬として用いられ、主に胃もたれや消化不良など、胃腸を温める効果が強いといわれる。
県内における山椒の生産量は528・5㌧で全国1位。約58・6%のシェアを占めている。また、栽培面積は167㌶で、こちらも全国1位。全国の栽培面積の約50・5%を占め、国内における山椒の一大産地となっている(いずれも2018年の農水省統計)。
次週は山椒の歴史や種類について紹介したい。
(次田尚弘/和歌山市)