心の回復力の高め方 精神科医の伊良波さん講演
日本教育会和歌山県支部(岩橋憲司支部長代行)の本年度の総会と記念講演が、和歌山市湊通丁北のアバローム紀の国で開かれた。記念講演では、いらなみのりこメンタルケアクリニック(同市田中町)院長で精神科医の伊良波範子さんが「治療から予防へ~心のレジリエンスを高めるために~」を演題に、ストレスや不安との向き合い方について話した。
校種を越えて学び合おうと開かれ、県内の小中高校の教職員やPTA会長ら約140人が出席した。
伊良波さんは、2023年の和歌山県の自殺死亡率は全国2位で、対策が急務だと指摘。米国や英国では、薬ではなく精神療法に重点を置いた治療であるのに対し、日本は薬物療法に偏った診療にある現状を伝えた。
うつ病の治療法として確立し、あらゆる精神疾患に対して治療効果が高いとして用いられるようになった認知療法・認知行動療法の有効性を紹介。認知療法とは、心のレジリエンス(回復力)を高めるもので、「何か困難にぶつかった時に、それに向き合い、乗り越えていけるような心の力を育てる方法」と説明した。世の中の出来事に対し「現実と自分の解釈は別物」との認識が重要で、できる限り現実をしなやかに受け止められるようにすることで、ストレスや不安が軽減し、自己回復力を高めることにもつながると指摘。「考え方を変えるのではなく、緩める・バランスを良くするイメージだと捉えてほしい」と呼びかけた。
自分で自分を癒やしたり、心のスキルアップを身に付けたりすること、心の幸福度を上げて社会問題の解決につなげることが大切だとした。メンタルを原因とする休職者が多くなっているデータを示し、教育現場や企業などでの認知療法の導入や活用を勧めた。この他、総会では前年度の会計報告があり、新役員と本年度の事業計画案が承認された。