高額な入漁料「なぜ」 県内中学生研修リポート③
研修期間中、生徒らは、根室半島最東端納沙布岬にある北海道根室市納沙布の北方館に立ち寄り、北方領土について、同館の本間隆平さん(32)から説明を受けた。
本間さんは、祖父が島民だったといい「元島民も現在は約5300人、平均年齢は88歳。「(北方領土は)ここから見えている。近いけど行けない。私たち若い世代が伝えていかなければ」と話す。
同館は1980年に開館。北方領土返還要求運動の原点の地で、北方の島を望みながら、問題の発生の状況や歴史的経緯を展示資料で学ぶことができる施設。
生徒らは本間さんから、それぞれの島と本土の間に設けられた中間推定ラインの話を聞いた。
ラインを越えるとロシアに武力行使や拿捕(だほ)されてしまうため、古くから歯舞群島でコンブ漁で生活をしてきた漁師らはロシアと民間協定を結び、漁の期間(6~9月)はロシアに年間約9000万円の入漁料を支払い、コンブ漁をしているという。
本間さんは「捕まると何をされるか分からない。家族の生活を支えるために仕方なく」と悔しさをにじませる。話を聞いた紀見東中の稲本壮良さん(13)は、日本の領土なのになぜお金を払って漁をしないといけないのか、金額を聞いて衝撃を受けたといい「しっかり勉強して早く返還となるよう多くの人に伝えたい」と話した。
生徒らは、四島(しま)を返せという思いを形にし、北方領土を四つのブロックで表現した「四島のかけ橋」も見学した。1981年に建立されたもので、高さは12・62㍍、長さ35㍍。中には、署名簿が貯蔵されている。
かけ橋の奥には「祈りの火」がある。アメリカから返還された沖縄県波照間島で採火したもので、北方領土が返還されるまで燃やし続けようと願いを込め、毎日点火している。本間さんは「肉眼で見える島の近さを実感してもらい、一日でも早く返還を実現するため、身近な問題として捉えてほしい」と伝えた。