青洲の妻、心して演じる 大竹しのぶさん生誕地訪問

春林軒を見学し往時をしのんだ
春林軒を見学し往時をしのんだ

和歌山市生まれの作家・有吉佐和子の不朽の名作「華岡青洲の妻」が7月に京都・南座で上演されるのを前に主演で青洲の妻・加恵を演じる俳優の大竹しのぶさん(67)が11日、作品の舞台である紀の川市の青洲の里を訪門。墓や青洲が活躍した往時をしのぶ建物などを巡り「作品の中に出てくる穏かな言葉の中にある芯の強さを実際感じることができた」と、自身が演じる役柄に思いをはせた。

同舞台は1966年に有吉が発表した小説が原作。世界初の全身麻酔による乳がん摘出手術を成功させた華岡青洲の母と妻の愛情と嫉妬の物語。これまで何度も映画やドラマ、舞台化され、さまざまな名優たちが演じてきた。

今回は大竹さん演じる加恵と熾烈(しれつ)な嫁姑争いを繰り広げる青洲の母・於継(おつぎ)役に波乃久里子さんが挑む。

この日、大竹さんは華岡家の墓石群で青洲と、青洲の母と妻の墓に花を供え、手を合わせた後、青洲が活躍した当時の建物が残る春林軒で、病棟や生活空間を見学した。

その後の会見で大竹さんは、華岡青洲に出合ったのは小学生の頃に見たドラマだと振り返り「嫁姑の戦いをドキドキしながら夢中になって見ていた。大人になってから原作を読み、今回青洲先生の生まれた地に来ることができ、改めて偉業をひしひしと感じ、心して演じなければいけないと思っている」と話した。

有吉作品では「ふるあめりかに袖はぬらさじ」、「三婆」などに出演している大竹さんは「有吉さんの作品では、人間のおかしさと愚かさといとしさが描かれている。台本を読んで改めて有吉さんがすごい方だなって思うので、こういう芝居が受け継がれていくよう、いいものを新しいチームでつくりたい」と意気込んだ。

京都南座公演では紀の川市合併20周年記念として、同市や青洲の里などが後援する。

岸本健紀の川市長は「青洲先生の偉業を舞台で有名な俳優さんが演じ、皆さんに知っていただけるのは郷土の誇りですごくうれしい」と喜び、大竹さんは「紀の川市は景色がきれい。桃も咲いていてイチゴもおいしい」と笑顔だった。

また、この日は県立高等看護学院入学式に大竹さんがサプライズ登場し、新入生にエールを送った。

公演は7月10日~23日に京都・南座で行われる他、福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、東京・新橋演舞場で上演される。

公演をPRする大竹さん(中央)と岸本市長㊨、今城崇光副市長
公演をPRする大竹さん(中央)と岸本市長㊨、今城崇光副市長