亡き母への思いなど綴る 前田さんがエッセー

3冊目の著書を手に前田さん
3冊目の著書を手に前田さん

元小学校教諭で、和歌山県岩出市在住の前田ゆきみさん(70)の3冊目の著書『しあわせのおすそ分け』がこのほど、㈱和歌山新報社から出版された。2021年から24年末まで、異常気象や変化する社会の中で起こった出来事や感じたことを、自分なりの視点で書いたエッセー。

前田さんは高野町出身。大学を卒業後、大阪府内の小学校教諭として約40年間教壇に立った。仕事柄、日誌をつけることが多く、自身の行動や考えについても時折、見返しては書き記すことを習慣にしてきた。1冊目の著書『森・川・海』は2011年の東日本大震災をきっかけに自分の生き方や学校、地域について忘れずに残したいという思いを積み重ねて記した。

2冊目の『風にのって』は、急速に変化する現代社会を風にのって飛び立つように自由に、鳥のように俯瞰(ふかん)して書いた。

今回出版した『しあわせのおすそ分け』は、前田さんが取り組む浜辺に打ち上げられた漂着海藻を採集して作る「海藻おしば」の活動や、食、教育、異常気象など、8テーマに分け、全106ページでまとめた。

昨年95歳の母が亡くなった時の話をつづった「ふるさとと共に」では、母の自宅を整理していて見つけた手紙について書かれている。「皆様へ」記された封筒には「長々とお世話になりありがとうございました」との文字。

介護施設に入るため、家を去る時に書いたものだと思われた。それを見て「最後まで家で暮らしたかったのだろう」と涙が止まらなかったことや、母への思いを記している。

書くという作業が自身を客観的に見つめ直し、気付きを与え、前に進む力になったという前田さん。「年齢を重ねるほど、日常のあらゆることが学びであると思えるようになり、書き留めてきたからこそ今の自分がある」とし「変わりゆく世の中をしっかり見て学びこれからも書き続けていきたい」と話している。