子どもシェルターを知って 桐蔭高が創作劇上映へ
虐待などにより家庭で暮らせない子どもを一定期間保護する「子どもシェルターるーも」の開所記念シンポジウムが2月11日午後1時15分から、和歌山市民会館で開かれる。居場所を失った子どもたちへの理解を深めてもらうため、県立桐蔭高校の演劇部がシェルターを舞台とする創作劇を上演することになっており、シェルター運営に携わる弁護士らの協力の下、生徒たちは練習に励んでいる。
子どもシェルターは、児童相談所の対象外となる18、19歳を含め、既存の児童福祉施設などで受け入れが困難な未成年者のための緊急避難場所。相談を受けると、子ども一人に担当の弁護士(コタン)一人がつき、子どもの意見を尊重しながら、家庭復帰や里親委託、他施設への入所など、その後の生活を支援する。
るーもは、全国8番目、政令市を除く中核市規模で初のシェルターとして昨年10月に開所。NPO法人子どもセンターるーも(理事長=中川利彦弁護士)が運営している。特に緊急性が高い性的虐待に対応する女性専用施設であり、これまでに2人が利用し、新たな生活をスタートさせている。
シンポジウムの開催に当たり同NPOは、話を聞くだけでなく、目で見てシェルターをより深く理解してもらえる内容にしたいと考え、桐蔭高校演劇部に創作劇を依頼。部員11人は同NPO理事の土居聡弁護士(33)、るーもでコタンをした伊藤あすみ弁護士(29)らからシェルターの役割、るーもで生活した子どもたちの様子などを詳しく聞き、2年生で部長の桑原南さん(17)が昨年末、脚本「しあわせのうた」を完成させた。
物語は、子どもがシェルターに入り、生活する日常の様子や、徐々にスタッフと打ち解けていく心の変化、悩みながら懸命に支えるスタッフなどを、実際のエピソードを交えて温かく描いている。
伊藤さんは「劇の中で、自分の希望や意志を伝えることができなかった子どもに、そういうものが芽生えてきます。実際のシェルターでもそうです。舞台を見て感じてほしい」と期待を寄せる。
年明けから本格的な稽古に入り、部員は1シーンごとにミーティングをし、せりふや仕草、演出の細部まで意見を述べ合い、磨き上げる作業を続けている。
桑原さんは「シェルターに入る子を特別だと思ってほしくない。人を認めていく方向に変わっていく様子を描きたい。子どもが虐待について考えるとどう見えるのかも大人に知ってほしい」と劇に込めた思いを話す。
土居さんは「多くの皆さんに来ていただき、シェルターの役割、施設の中の生活が安全であること、子どもの意志が尊重されることを知ってもらいたい」と呼び掛けている。
シンポジウムは参加無料、申し込み不要。創作劇の他、東京に全国初のシェルターを開設した、弁護士でカリヨン子どもセンター理事長の坪井節子さんが基調講演し、県障害福祉課長の宮腰奏子さんが児童福祉の現状と課題を講演する。
問い合わせはるーも事務局(℡073・425・6060)。