瀬戸内海の魅力守り80年 日本最大の国立公園
前号では伊豆・下田にある「和歌の浦」について紹介した。相模灘に面し太平洋のどこまでも青い海が特徴的であった。一方で和歌山市の「和歌浦(わかのうら)」は紀伊水道に面する瀬戸内海。潮の流れが速くリアス式の地形が特徴で、同じ海といっても太平洋と瀬戸内海では、それぞれで異なる魅力がある。今、瀬戸内海の魅力を再認識しようという動きが各地で活発になっている。
瀬戸内海は東端を和歌山県、西端を大分県とする本州・四国・九州に挟まれた内海。その優れた風景や豊かな自然を守ることを目的に、昭和9年、国は瀬戸内海の一部のエリアを日本で初めての国立公園に指定し「瀬戸内海国立公園」とした。指定から80年を迎えることし、香川県や岡山県、広島県では記念式典をはじめ、写真展、観光ツアーなどが積極的に開催されている。
「瀬戸内海国立公園」は東西約450㌔と、全国で31カ所ある国立公園の中で最大規模。県内では和歌山市がそのエリアに含まれ、加太・友ヶ島地区と和歌浦・雑賀崎地区の海域と陸域が指定されている。面積は482ヘクタールと小規模でありながらも、地域の特色を踏まえた風致・風景の管理、地域の開発・整備への対処等が定められた管理計画もあり、それに沿って保護が行われている。
これら和歌山市の地域が国立公園に指定されたのは昭和25年。当初の指定区域である香川県、岡山県、広島県より十数年遅れての指定であり、また、小さな島々が無数に存在する瀬戸内海らしさがこれらの地域に比べると薄いところもあるが、段々に建つ家々が特徴的な集落や港町の存在は、瀬戸内海の町並みそのもの。人と自然が共存する豊かな地域の魅力を深掘りしていきたい。
(次田尚弘/和歌山)