拓本の文化と魅力 18日まで県博で
凹凸のある文字や模様を写しとる「拓本」の文化や魅力を紹介する企画展「墨一色―拓本と摺物の世界」が18日まで、県立博物館(和歌山市吹上)で開かれている。
館内には、木版印刷の原板となった版木(はんぎ)など、印刷の歴史を物語る重要文化財を含む41件の資料を展示。中でも、現在は1点しか確認されていない熊野那智大社の牛玉宝印(ごおうほういん=寺社で発行する札)の掛け軸や、版木自体が信仰の対象となっていたことを示す全国唯一の資料などがある。愛知県在住の愛甲昇寛(あいこう・しょうかん)氏から同館に寄贈された拓本約2300点のうち、高野山町石や奥ノ院石仏などの貴重な拓本も展示している。
同館の坂本亮太学芸員による展示解説では、熊野三山をはじめ各地の寺社で発行された牛玉宝印や、さまざまな寺社で参拝者に配る印刷物の基となった版木について分かりやすく説明された。「版木は、お寺の活動や歴史を雄弁に語ってくれる。古文書にも記されていないような新しい情報が見つかったりする」と話すと、訪れた人たちは凹凸が美しく写し出された資料に見入っていた。
和歌山市田尻の会社員、山野貢さん(54)は「江戸時代の手作業で、いまの印刷の活字とほとんど変わらない立派な文字が彫られていて驚いた。興味深いですね」と話し、坂本学芸員は「さまざまな種類や形、時代に印刷された資料一点一点から、『こんなものがあるんだ』といろんな発見をしてもらえれば」と話していた。
展示解説は11日と17日の午後1時半からも行われる。