「世界津波の日」制定を提唱 「国土強靱化」政策への覚悟
「命の尊さは世界共通である。何よりも国民の生命を守ることは国土強靭化政策の基本理念であり、政治家としての使命である」
去る3月16日から18日に仙台で開催された、第3回国連防災世界会議において、各国首脳・閣僚・国際機関の代表等、約4000人を前に、私はこれまで取り組んできた国土強靭化政策の重要性について強く訴えてまいりました。そして、わが国においては「稲村の火」の物語をもとに制定した、「津波防災の日(11月5日)」を「世界津波の日」として制定することを、各国の幹部に提唱いたしました。
これまでわが国は幾多の大規模自然災害に見舞われ、その度に尊い命が失われてきました。国際社会における日本の新たな役割として、こうした過去の災害から得た経験やノウハウを世界各国と共有し、日本が世界をリードしていくことが極めて重要であります。
そのような思いから、会議において国土強靭化の政策理念を世界に広めるため「国土強靭化、海を渡る」と題し、講演をさせていただきました。
自然災害の発生自体を防ぐことは非常に困難です。しかし、いざ災害が発生した時、一人でも多くの命を救うためには、普段からの備え、訓練、教育をいかに積み重ねておくかが何よりも重要です。
東日本大震災では津波の被害により、2万人近くの尊い命を失いました。わが国だけでなく、世界各地でこれまでも地震発生時の津波により何度も大きな被害を受けてきましたが、その中でも先人たちは大きな教訓を残してくれています。特に私は、郷土和歌山が誇る実業家であり政治家でもあった濱口梧陵が、「稲村の火」の物語とともに残した遺徳と精神を後世に語り継ぐことは、津波の脅威とともに津波対策や教育に関心を持っていただくために極めて重要であると考えています。
過去には小学校の国語教科書でも「稲村の火」は採用されましたが、今では、同じく地震多発国のギリシャの学校のDVD教材として、防災教育に役立っています。また、経済産業大臣時代に創設した国際研究機関であるERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)では、国土強靭化の理念を広める動きも始まっており、来月にはERIAと日本・インドネシアの両国政府との協力で国土強靭化シンポジウムも開催されます。加えて、ERIAは昨年OECD(経済協力開発機構)とも災害リスク評価やインフラ投資の研究について協力協定を締結しており、世界中で国土強靭化に対する取り組みや理解が進んできています。
私は自民党が野党の時代から国土強靭化政策に一貫して取り組んでまいりました。すでに「津波防災の日」の制定を含め、国土強靭化基本法など4本の関連する法律を成立させました。各界の専門家・有識者を招き、仲間の国会議員とともに重ねた勉強会は約90回を数えます。間もなく、緊急提言集の第4巻が発刊されます。(「日本を強くしなやかに 国土強靭化2015年版」―中央公論新社発刊―)
しかしながら、この取り組みにゴールはありません。11月5日を世界津波の日に!「住民百世の安堵を図る」濱口梧陵が残した遺訓を胸に、日本だけでなく世界の一人でも多くの人々を、地震・津波の災害から守るため、政治の責任において「国土強靭化」に取り組み続ける覚悟です。