県がTPP影響試算 年間産出額55億円減

 環太平洋経済連携協定(TPP)による関税撤廃などの影響が懸念される県内農林水産物について、県は、何も対策を取らなかった場合、年間産出額が54・8億円減少するとの試算を独自にまとめた。これらの影響をカバーするため、特に影響が大きいかんきつについて、TPPを乗り切る「かんきつ農業の競争力強化」を国に要望した。

 県が17日発表した試算によると、年間産出額は農産物(コメ、かんきつ類、その他果樹、野菜類)で51・5億円減(産出額443億円の11・6%)、うちかんきつ類で35・7億円(同282億円の12・7%)減少。畜産物(牛肉、豚肉)で1・6億円、水産物(アジ、マグロ類、イカ、タコ)で1・7億円、林産物(合板原木)で0・03億円減少となっている。

 特に産出額が大きいかんきつ産業への影響を見ると、温州みかん(平成25年県産出額248億円)はウルグアイ・ラウンド農業合意に基づくオレンジ輸入自由化時の県産ミカン生産量減少率と同等の影響を想定し、10%(24・8億円)減を予想。ハッサク、甘夏などの中晩かん(25年県産出額34億円)はオレンジの関税率程度の価格低下を想定し、32%(10・9億円)減と見込んだ。

 温州みかん1・5㌶、中晩かん0・5㌶経営の標準的なかんきつ農家では、年間所得546万2000円が29%減の386万9000円となる。

 必要な対策として、生産性向上による低コスト化に73億円(園地改良、モノレールなどの更新、かんがい施設整備)▽高品質化による価格アップに109億円(厳選出荷、優良品目・品種への転換、ブランド商品拡大、新品種開発)▽輸出促進や6次産業化による販路拡大に1億円(相談窓口の設置、事業者支援、消費拡大運動の展開)――を挙げ、国にオレンジの輸入関税撤廃(協定締結後8年目)までの強化対策183億円を要望した。

 県は「国にはできるだけ早く対策を打ち出してもらい、農家に早い時期に安心してもらいたい」と話している。

記者会見で試算を発表する県職員

記者会見で試算を発表する県職員