高野山で「写経体験」 非日常のひと時を
市街地でも、木々の葉が色づき始めるようになってきた。この連休、紅葉狩りに出掛ける方も多いのではないだろうか。
高野山ではすでに落葉が進み、晩秋を迎えている。昨年は12月上旬には積雪したことを記憶しているので冬の到来は間もなくだ。
先日、筆者は、企画・運営をお受けしているバスツアーで、高野山町石道の一部を歩き、高野山内の宿坊で精進料理と写経体験を行い、奥ノ院を拝観する日帰り旅へ、約50人をご案内させていただいた。
なかでも写経体験は参加者からの満足度が高く「観光目的ではない高野山の魅力にふれられた」など、称賛の声を多数いただいた。今週は写経の目的や体験の機会について紹介したい。
写経は印刷技術が乏しかったはるか昔より仏典の保存(継承)や仏典を書き写すことによる功徳を目的に現代まで受け継がれている。262字の般若心経で構成され、原典はインドから中国へ渡り、漢文体に翻訳され日本に伝わったもので、仏教の根本となる教理が説かれている。一字一字、心を込めて写経することにより「仏道を発心し、あらゆる悩みや苦しみを解消し、幸福な暮らしが開ける」という。
般若心経はいかなる宗旨にも共通したもの。日ごろの自分を振り返ることができ、また、意識を集中することにより神経や脳の動きが活発になる効果もあるという。初めての体験では集中力や忍耐力が試されるが、書き上げ、納経した際の充実感はひとしお。
初心者には薄く文字が印字された用紙が使われ、字をなぞればよいので気負いする心配はない。間もなく初冬を迎える静かな高野山の宿坊で、日ごろの雑踏から離れる機会もよいのでは。 (次田尚弘/高野町)