トルコ友好の音楽を発信 海南の向山さん
公開中の日本・トルコ合作映画「海難1890」により、両国友好の原点であるエルトゥールル号遭難事故と、イラン・イラク戦争時のテヘランでの日本人救出劇が大きな注目を集めている。この史実を音楽を通じて後世に残そうと、かねて活動を続けてきたのが、海南市の実業家、アマチュア作曲家の向山精二さん(69)。トルコでの記念演奏会に向けて、意欲を見せている。
昨年はオスマントルコ帝国の軍艦、エルトゥールル号の遭難事故から125年の節目を迎えた。遭難の際、串本町大島の住民が献身的に乗組員を救助したことは、世代を超えてトルコの人々の間で語り継がれ、1985年のイラン・イラク戦争では、テヘランに取り残された日本人を、トルコ航空機が救出することにつながった。
向山さんは、両国友好のこれらの史実を自らの作品「紀伊の国交響組曲」に取り入れ、第5楽章「友情」は「九死に一生(テヘラン脱出)~エルトゥールル号の軌跡(エルトゥールル号の乗員に捧げる曲)」との内容になっている。
これまで、国内では東京のサントリーホールや新国立劇場、NHKホールなどで演奏され、13回に及ぶトルコ公演も好評を得ている。
エルトゥールル号の遭難から125年の昨年は、日本の外務省やトルコの文化観光省、駐日トルコ大使館などの後援により、10月16日に首都アンカラでトルコ共和国大統領交響楽団による演奏会「日本・トルコ共和国友好125周年記念コンサート」の上演が決定。指揮をする向山さんや関係者らが現地入りし、リハーサルも行った。
しかし、10月10日にアンカラで100人以上が死亡する爆弾テロが発生し、事件から数日後の演奏会は直前になって開催が見送られ、ことしに延期となった。
向山さんは「大統領交響楽団との共演という、大変名誉な機会をいただき準備を進めてきましたが、国際情勢と安全面を第一に考慮した上で、やむなく延期になりました。大変残念ですが、こんな時こそ125年以上続いている日本とトルコの固い絆、そして平和をコンサートを通して世界中に発信し、次世代に伝えていきたい」と一層の意欲を示す。
爆弾テロの現場で献花し、祈りをささげた向山さんは、延期となった記念演奏会を心待ちに、準備を進めている。