岩橋千塚古墳群に追加へ 天王塚など2基

 国の文化審議会(馬淵明子会長)は17日、和歌山市の大谷山22号墳(鳴神)と天王塚古墳(下和佐・西)を、特別史跡岩橋千塚古墳群に追加指定するよう馳浩文部科学大臣に答申した。指定面積は1万737・51平方㍍増え、計61万9538・51平方㍍となる。

 同古墳群は和歌山平野の東側に位置し、5世紀初頭から7世紀後半にかけて築造された約850基を擁する日本有数の大規模な群集墳。このうち約430基が特別史跡に指定され、指定地を中心に県立紀伊風土記の丘が設けられている。

 大谷山22号墳は、標高132㍍の大谷山山頂に位置する墳丘長約70㍍、2段築成の前方後円墳。墳丘表面に葺石(ふきいし)は存在しないが、各段築のテラスには円筒埴輪(はにわ)を巡らせており、造出部からは人物、動物、家、盾などの形象埴輪や須恵器壷などの出土が見られる。後円部の中央に設けられた横穴式石室は全長7・8㍍、高さ3・15㍍、結晶片岩を用いて構築され、石梁1本と石棚が設けられた「岩橋型横穴石室」と呼ばれるもの。出土遺物から、築造時期は古墳時代後期前半と考えられる。

 天王塚古墳は、墳丘長88㍍、2段築成の県最大の前方後円墳で、標高155㍍の岩橋丘陵最高所に築造されている。埴輪や葺石などの外表施設、造出、基壇、周壕は認められていない。後円部の中央に設けられた横穴式石室は全長10・95㍍、高さ5・9㍍、結晶片岩を用いて構築され、石梁8本と石棚が設けられた、やはり「岩橋型横穴石室」と呼ばれるもの。石室内からはガラスや琥珀などの小玉、金銅製飾り金具片、土師器(はじき)、漆製品などが、前方部からは弥生時代の石斧と弥生土器が出土。築造時期は古墳時代中期中頃と考えられる。

 両古墳は、市民グループから特別史跡への追加指定を求める請願が県議会に提出されるなど、保護・活用に向けて民間からも強い要望があり、県教委は平成26年度から岩橋千塚古墳群の未指定地域の追加指定を目指して調査を実施。この事業の一環で、両古墳の規模などが明らかになり、追加指定の答申につながった。

 答申を受け仁坂吉伸知事は「岩橋千塚古墳群で最大規模の首長墳である天王塚古墳が特別史跡の範囲に含まれることになり大変喜ばしい。全国で2例しかない特別史跡の古墳群を、より一層誇りと思えるようになった」とコメントしている。

天王塚古墳の墳丘全景(県教委提供)

天王塚古墳の墳丘全景(県教委提供)