憲法に基づく社会を 木村草太教授が講演
県保険医協会(龍神弘幸理事長)主催の講演会が和歌山市北出島のプラザホープで開かれ、憲法学者で首都大学東京の木村草太教授が「テレビが伝えない憲法のはなし」と題して日本国憲法成立の歴史や立憲主義について話し、約270人が聴き入った。
木村教授は、憲法に基づき国家権力を抑制する立憲主義について、「近代に成立した主権国家は力が強大。暴走に備えた安全装置として憲法が有効」と解説。国家の代表的な暴走について、無謀な戦争、人権侵害、独裁の三つを挙げた。
日本国憲法は占領軍が2週間で作成し、強要したなどとする「押しつけ憲法論」については、制定に至るまでの歴史を詳しく解説し、外国人の保護を外した平等権の規定や皇室典範をめぐる駆け引きなど、日本側の主体的な努力を紹介。連合国側の働き掛けを認めつつ、憲法の条文と国内の法律をすり合わせる努力が行われていたと述べた。木村教授によると、敗戦当時の日本にとっては、憲法9条よりも、家父長制の解体につながる婚姻の自由を定めた24条の方が衝撃は大きかったという。
社会的な論争を呼んだ安保関連法に関しては、9条が軍の保持や交戦権を禁じている点は政府側も同じ見解であり、その例外をどこまで認めるかが争点だったと説明。政府は国民の安全や幸福追求権を保障した13条を根拠に集団的自衛権の行使を主張しているが、ホルムズ海峡の機雷除去など政府の想定事例とはあまりに乖離(かいり)していると強調した。安保関連法の運用については、付帯決議で事前承認が求められており、それなりの歯止めはあると述べた。
米軍普天間基地の辺野古移設をめぐる動きでは、基地の設置が自治権を侵害しかねないと強調。地方自治に関する憲法92条と95条を紹介し、法律や住民投票の必要性を訴え、安保条約や地位協定を根拠に翁長雄志沖縄県知事による埋め立て承認取り消しの違法性を認定した福岡高裁那覇支部の判決は、「条約や地位協定は根拠として不適切」と指摘した。