娘が語る発明王の妻 島和代さん巡るトーク
無縫製ニット編み機の製造などで世界的に知られる「和歌山の発明王」島正博さん(㈱島精機製作所社長)の妻で、平成25年5月に75歳で亡くなった島和代さんの生涯を描いたノンフィクション『紀州のエジソンの女房―島精機を支えた肝っ玉母さん・島和代物語』(中央公論新社)の出版を記念し、著者の梶山寿子さんと和代さんの3人の娘、長男の妻の女性5人によるトークショーが2月26日、和歌山市本町のフォルテワジマで開かれた。
宮脇書店和歌山店(西田聡社長)が主催。ノンフィクション作家の梶山さんを司会に、長女の梅田千景さん、長男の妻の島章江さん、次女の龍見恭子さん、三女の山田都さんが、同書の読みどころや和代さんの人柄、知られざるエピソードなどを語った。
同書を読んで涙した箇所として、千景さんと章江さんは、島精機に労働争議が起こった際のエピソードを挙げた。自宅まで街宣車が来て、父を批判する状況が千景さんには恐ろしかったが、和代さんは、何もやましいことはないと毅然とした態度で、押し掛けてきた人たちを追い払うため、ホースで水をまいたという。
章江さんは「家族のために、私ならそんなふうに立ち向かえるだろうか。さすがお母さんだと思った」と話し、千景さんは、和代さんがこのとき、陰では涙をこぼしていたことを同書で初めて知ったと告白した。
恭子さんは、和代さんと共にブティックの事業に取り組んだ当時を振り返り、晩年の和代さんが仕事の疲れを口にしていたことを紹介し、「若い頃から苦労した分、母にはもう少し楽しんでもらいたかった」と語った。
都さんは、和代さんが正博さんと夫婦げんかした際のエピソードなどを紹介しつつ、「母は父を尻に敷いているように見えて、父のことを立てて、尊敬していた」と紹介。正博さんは仕事が忙しくなり、遊園地などに都さんを連れて行く機会も少なかったが、和代さんがいつもフォローし、「おかげで父を尊敬する気持ちを持ち続けられた」と話した。
この他、もし島家の物語がドラマ化されたら誰に演じてほしいか、夢のキャスティングをそれぞれが語るコーナーもあり、来場者は、感動あり、笑いありの家族のトークに引き込まれるように聴き入っていた。