立野遺跡出土品など4件 県指定文化財に
県教育委員会は、新たな県指定文化財に、和歌山市の考古資料「立野(たちの)遺跡出土品」、有田川町の絵画「絹本著色十六羅漢像」、田辺市の考古資料「仮庵山(かりほやま)経塚群出土品」、北山村の無形民俗文化財「北山川の筏流し技術」の4件を指定し、かつらぎ町の天然記念物「十五社(じごせ)の樟樹」を追加指定した。田辺市の鬪雞神社は国の重要文化財に指定されたため、県指定を解除した。県指定文化財は580件となった。
立野遺跡出土品は木製品、石器、土器を合わせて532点。立野遺跡はすさみ町にある木製品の生産に関わる遺跡で、幅15㍍以上、深さ1・2~1・5㍍にもなる流路から、原材料、未完成品を含む木製品と木製品の加工道具を含む石器が発掘された。
木製品は農耕器具や容器、建築部材など多岐にわたり、温暖な紀伊半島に特徴的な木材が使用されている。
石器は石斧、削器、叩石など木製品の加工に使う器種に偏っており、石材は頁岩(けつがん)製が大半を占める。
土器は弥生時代前期の様相を示す弥生土器壺と突帯文土器深鉢が多い。東海を含む他地域から搬入された土器も出土しており、同遺跡が東西文化の接点となっている状況がうかがえる。
弥生時代前期の木製品、石器、土器の一括遺物であり、紀南地域に特徴的な木材と石材を使用して木製品を製作していた状況を示す貴重な資料群であると評価された。
「絹本著色十六羅漢像」は16幅からなる十六羅漢像。中国宋代の図像の影響が指摘される系統に属し、その系統で16幅全てが完存している唯一の事例であることが特筆される。
また、国宝の絹本著色明恵上人像(高山寺蔵)との近似から、明恵周辺に存在したことが知られる「唐本」十六羅漢像の具体的な図様を考える重要な手掛かりとなり、学術上の価値が高い。
「仮庵山経塚群出土品」は、鬪雞神社の社殿背後にある権現山に鎌倉時代に築かれた経塚群から出土した青白磁や石硯(せっけん)など。経塚群は同神社を所管する熊野別当家が祖先を追善供養するために造営したと推定されている。
出土品には埋経に関わる青銅経筒や奉賽に伴う石硯、鉄刀などが存在。特に石硯の経塚出土例は類例が少なく、非常に貴重とされる。
「北山川の筏流し技術」は、大台ケ原を源流とする北山川水系において昭和30年代まで継承された木材流送の技術。トラック輸送への転換やダム開発により、河川を利用した木材の流送は全国的に衰退したが、同水系では地形を熟知した筏師が棹(さお)と櫂(かい)を用いた独自の方法を伝えており、「観光筏下り」に引き継がれ、全国唯一の現行事例として今も保存、継承されている。
追加指定の「十五社の樟樹」は、妙楽寺の境内にそびえるクスノキの巨木で、昭和33年に天然記念物に指定された。幹周13・6㍍、樹高20㍍、枝張り25㍍、高さ2㍍のところから幹が8本に分かれて力強く伸びている。近年、根が展開している周辺地が開発、舗装されて樹勢に衰えが見え始め、指定地外にも根が展開していることから、周辺地を含めた保護が望ましいとされ、指定範囲が拡大された。