ラジオで島和代さん物語 三女の朗読で好評
島精機製作所の創業者・島正博さんの妻で、4年前に亡くなった島和代さんの波乱の生涯を描いた『紀州のエジソンの女房~島精機を支えた肝っ玉母さん・島和代物語』(梶山寿子著、中央公論新社)を朗読する連続ラジオ小説が、和歌山放送で毎週月曜日から金曜日、午後4時からの10分間、放送されている。朗読を担当するのは、島さんの三女・山田都さん(44)。娘ならではの、温かく心に響いてくる語りがリスナーに好評を得ている。
書籍は、ノンフィクション作家の梶山さんが家族や関係者への聞き取りを基に執筆し、昨年出版された。島精機の創業期から正博社長を陰ながら支え、二人三脚で歩んだ日々や、和島興産の前社長を務め、中心市街地の活性に尽くしたこと、4人の子どもを育て上げたことなど、真っすぐな気性と気さくな人柄で愛された和代さんの歩みを、島精機の歴史とともに記した笑いあり、涙ありの物語。朝の連続テレビ小説化を望む声も多く上がっているという。
番組のきっかけは、都さんが長女の千景さんと共に、出版記念トークショーのPRで和歌山放送にラジオ出演したこと。都さんの話しぶりにほれ込み、都さんなら和代さんへの思いを込めて語ってくれるのでは、と同社が朗読を依頼した。番組は5月8日にスタート。8月中旬ごろまでの放送を予定している。
都さんは朗読は初挑戦ながら、アドバイスを受け、練習を重ねるごとに情感豊かに。書籍化までにも、何度も目を通した文章だが「声に出して読んでみると、あぁ、お母さんはこんなこと言ってたなぁと、改めていろんなことが思い出され、楽しくもあり、ほろりとなる部分もあります」と明かす。
実は、ものまね好きという都さん。せりふは特に思いが入り、和代さんやきょうだいの話し方の特徴や雰囲気も、できる限り伝わるように演じているという。
中でも、和代さんが家族を守るため、労働争議で自宅に押し掛けた男たちを追い払った「水まき事件」のシーンは臨場感にあふれ、「まるで和代さんが降りてきたよう」と周囲が驚いたほど。
「文字で読むと少しきつい印象のお母さんの言葉も、音声にすることで、本来の、ちゃめっ気ある雰囲気が伝われば」と話す。
今も和代さんを近くに感じる毎日だといい「いまだに母は怖い存在。今回の朗読も『あんた、しっかりやりなぁよ。周りに迷惑かけたらあかんで』そんな声が聞こえてきそうです」。
ただ、家族ゆえの難しさも。すでに収録のほとんどを終えたが、涙であふれ、読み進められない部分を残しているという。
都さんは「皆さんが知っているのは、『島精機の奥さん』、あるいは豪快な姿かもしれませんが、実際には繊細で愛情深い人でした。ラジオを通じて、お母さんの人となりを感じ取ってもらえたらうれしいです」と話している。