風土記の丘 中村新館長の講座スタート

県立紀伊風土記の丘(和歌山市岩橋)で6月24日、4月に就任した中村浩新館長による「館長講座」が始まった。全3回の第1回となった今回は「東南アジアの土器つくり―土器つくりの村を訪ねて―」と題し、カンボジアで行われてきたさまざまな土器の製作について、中村館長自身の研究や体験を交えて話した。

中村館長は考古学と博物館学が専門。著書には世界の博物館や世界遺産などを巡る『ぶらりあるき』シリーズなどがある。元々は須恵器を中心に研究し、約20年前からは世界各地の土器も調査、研究している。

講座で中村館長は、カンボジアには現在も土器を生産する村が多数存在していることを紹介し、こうした村はインフラが整備されておらず、今後インフラが整い、物資が十分に行き渡るようになれば土器作りがなくなってしまうであろうことを語った。

土器の材料になる粘土は山のふもとから採掘され、作り手が自ら採取に行ったり、販売人から買い取ったり、村の環境によってさまざまだという。粘土は粉砕してからモミと混ぜ、混和材を作る。

カンボジアの土器作りは、粘土をひも状にして巻き上げていくマキアゲ・ミズビキ法と、板状にした粘土で作るタタラ法が一般的。ヤシの木を作業台にして粘土を巻き上げていき、厚さを均等にするため、土器の内側と外側から粘土をのばす。土器の内側は手が小さいほうが作業しやすいことから、土器作りは女性が行うことが多い。

焼成は野焼きで行われ、まきやわらの上に土器を並べ、その上からわらをかぶせ、水をかけてから火をつける。

中村館長は、こうした土器作りの工程を詳しく解説し、焼き方の技術を調査することで、昔の土器を復元できる可能性も膨らむと紹介。「土器作りの技術は現代では淘汰(とうた)される運命にあるが、土器作り体験など観光に取り込むことで追体験も可能かもしれない。また、7~8世紀の日本の性別分業に近いものが残っているので、早く記録を取る必要がある」と話し、さらなる調査と技術の継承の重要性を語った。

館長講座は今後、第2回を8月19日、第3回を12月2日に予定している。

カンボジアの土器について語る中村館長

カンボジアの土器について語る中村館長