城下町の風情 岡公園に「長屋門」を移築

 和歌山市指定文化財「旧大村家住宅長屋門」の岡公園(同市岡山丁)への移築工事が完成し、7日に竣工記念式典が行われた。市内に残る数少ない武家屋敷の長屋門であり、城下町の風情を残しており、今後は観光資源としての活用も期待される。

 同門は、海鼠(なまこ)壁の外壁や本瓦葺きの屋根など、武家屋敷らしい重厚な外観が特徴。代々徳川家に仕えた紀州藩士・大村弥兵衛家の長屋門で、元は県庁の北西100㍍ほどの東坂ノ上丁に屋敷が構えられていたが、明治30年ごろに所有者が代わり、堀止東に移築され、近年まで住まいとして使われていた。

 平成26年夏、貴重な文化財である長屋門を保存し、後世に伝える機運が高まり、同年秋から移築のための解体工事が始まった。28年3月から組み立て工事、9月から周辺の整備工事を行い、先月に完成した。

 解体・組み立て工事費の約1億円は県が、周辺整備工事費の約7000万円は和歌山市が、それぞれ拠出した。

 式典で尾花正啓市長は「岡公園には陸奥宗光像もあり、歴史文化を色濃く感じられる一帯だ。ここに白黒の格子状の格調ある長屋門が配置されたことで、国内外に広く、和歌山の文化を発信していきたい」と話した。

 テープカットなどで完成を祝い、門に隣接して整備された部屋では、紀の川市出身の箏奏者・植野由美子さんが「線香花火」を披露し、式典に花を添えた。

テープカットをする尾花市長(左から3人目)ら

テープカットをする尾花市長(左から3人目)ら