自然に忠実に描きたい 楠瀬さん個展
海南市下津町中の楠瀬伸和さん(60)の個展「紀伊半島の自然を描く」が31日まで、和歌山市の県民文化会館で開かれている。
楠瀬さんは独立美術協会会友。10代の頃から海南市の洋画家の浜田邦男、田辺市中辺路町ゆかりの南画(水墨画)の重鎮、渡瀬凌雲の両氏に師事。約40年前には欧州やアフリカ、中近東を放浪するなど、少し変わった経歴を持つ。全国公募展で入賞を重ね、昨年の県展では最優秀賞を受賞している。
個展は2度目。最近10年間で紀伊半島を取材し、制作した大作を中心に油彩画約20点を展示。数年前からは写実から抽象表現に移行し、会場には雰囲気の異なる作品が隣り合う。楠瀬さんは「余計なものをそぎ落とし、大事なエキスのみを残した結果、この表現にたどり着いた。今展をもって、具象作品の展示は最後になりそうです」と話す。
会場には高野・熊野の巡礼地や串本町潮岬の岸壁などの具象風景の他、那智の滝を題材に、案内人の行者の念仏から取った作品「懺悔懺悔六根清浄(さんげさんげろっこんしょうじょう)」(3枚組)、曼荼羅(まんだら)の世界を表現したような「三千世界」など抽象作品が並ぶ。
楠瀬さんは「自然の中に身を置くと〝降ってくる〟ような感覚があります」と笑顔。「さまざまな情報が簡単に得られる時代だからこそ、これからも実際にその場で得た『現場感』を大切に、自然に忠実に描いていきたい」と話している。
午前10時から午後5時(最終日は3時)まで。