二科展でローマ賞 彫刻家の橋本さん栄誉

 和歌山県湯浅町の彫刻家・橋本和明さん(59)の作品「Kanon―時を渡る」が、東京国立新美術館で開かれた第102回二科展で、ローマ賞を受賞した。同賞は二科会会員の優秀な彫刻作品に贈られ、海外研修の機会が与えられる。橋本さんはイタリアへの渡航を検討しており「学生の頃から憧れ、目標であった賞。喜びとともに大きな責任も感じています」と思いを新たにしている。

 橋本さんは日本美術家連盟会員で、和歌山信愛女子短期大学非常勤講師などを務め、第1回ロダン大賞展優秀賞、県文化奨励賞など多数の受賞歴がある。

 10年以上前から、ギリシア語を語源とし「戒律」などの意味を持つ「Kanon」をテーマにした作品を制作している。今回の受賞作は高さ1・9㍍、幅1・6㍍の石膏(せっこう)像。すらりと伸びた手足が美しい像の背には、翼のような直線の板が横に伸びる。梁(はり)を利用した土台の上に凛として立ち、橋本さんは「喜びや哀しみ、怒りなど、人間が持つ諸々の感情を粘土で形の中に封じ込めた」と話す。

 今回の受賞は、一貫して自らのテーマを掘り下げ、作品に向き合ってきたことなどが高く評価された。受賞作の創作に当たっては、普段はしないが、ミケランジェロの作品の写真をアトリエの壁に貼って取り組んだ。

 橋本さんは「本場で彫刻する目と心を研ぎ澄ましてこようと思います。その先にどんな景色が見えるのか、楽しみです」と話している。

 橋本さんの作品が展示される第102回二科展の関西巡回展は、大阪市立美術館(10月31日~11月12日)で開かれる。

橋本和明さん

橋本和明さん


ローマ賞を受賞した「Kanon―時を渡る」

ローマ賞を受賞した「Kanon―時を渡る」