紀の川市で1人死亡 台風21号県内に被害
超大型の台風21号は22日夜から23日未明にかけて紀伊半島沖を通過し、県内でも甚大な被害が出た。和歌山県紀の川市では住宅に土砂が流れ込んで高齢夫婦が巻き込まれ、82歳の男性が死亡した他、県内各地で床上・床下浸水の被害が発生。海南市では土砂崩れにより通行車両約30台が一時身動きが取れなくなるなど、各地に大きな爪痕を残した。
紀の川市西脇地区では22日午後8時半ごろ、広域農道の盛り土の崩壊で土砂が木造2階建ての1階部分に流れ込み、この住宅に住む75歳の妻は救出されたが、夫の死亡が確認された。
県内全域で暴風を伴う大雨となり、和歌山地方気象台によると累積雨量が新宮市で960㍉、和歌山市では最大瞬間風速31・9㍍(23日午前0時3分)を記録した。
県内では2地区931世帯、2240人に避難勧告。有田川町を中心に約1190軒が停電(うち海南市10軒)した。
和歌山市では最大で140世帯294人が避難。同市三葛で72歳の女性が自宅玄関前で強風にあおられて転倒、右肩を強く打つなどし、病院に救急搬送された。また内原の60歳女性が帰宅途中、路面が冠水していたため手足が冷え、低体温症で病院に搬送された。
海南市では22日午後9時ごろ、県道18号海南金屋線上2カ所で土砂崩れが発生し、車両32台と乗車していた65人が一時孤立。道路の亀裂のため海南署員が交通整備中に幅員約8㍍の道路が約20㍍にわたり陥没し、道なりに約200㍍先で山肌の土砂崩れが発生したとみられ、通行者や署員が取り残された。駆け付けた消防隊員らが約8時間45分後に全員を無事に市海南保健福祉センターまで送り届け、けが人などはなかった。
紀の川市では、最大で11カ所に約200人が避難。貴志川町丸栖、桃山町調月地区で貴志川の水位上昇により支流や農業用水があふれ、市内で100軒以上とみられる住宅が浸水した。
23日朝から、那賀消防組合は周囲を水に囲まれ孤立した住民をボートで救出。一帯の水をポンプ車でくみ出す作業が行われ、午後3時ごろには冠水した道路も通行できるまでになり、浸水した住宅では住民が片付けに追われていた。
床下浸水の被害に遭った丸栖地区の男性(43)は「15年ほど住んでいるが、これほどの被害は2回目。22日の雨は以前ほどの豪雨ではなかったが、台風が来る前から雨が続いていたからではないか。後の掃除が大変」と話していた。
JRはきのくに線が23日に特急27本、普通列車は新宮―和歌山間で93本、紀勢線は和歌山―和歌山市間で26本、和歌山線は和歌山―五条間で62本が運休し、約2万7990人に影響が出た。
和歌山電鐡貴志川線は同日、和歌山―伊太祈曽間で区間運休1本を含む下り11
本、上り13本が運休し、約2000人に影響した。
南海電鉄は22日時点で南海本線、多奈川線、加太線、高野線で運休274本、遅延620本で約9万人に影響が出た。その後の影響については現在調査中。23日正午現在、本線の樽井駅―尾崎駅間で男里川橋梁の路線のゆがみのため運休している他、高野線の上古沢駅内の上り線の一部が路盤沈下し、高野下駅―極楽橋間が運休。現在復旧作業中という。
和歌山―徳島間の南海フェリーは22日が上下12便、23日は終日欠航となった。
23日には県内全体で幼稚園16園、小学校52校、中学校11校、高校9校、特別支援学校8校で休校となり、一部の学校では自宅待機の後、授業再開となった。
一連の台風被害を受け、仁坂吉伸知事は24日の定例会見で「犠牲者が出たのは痛恨の極みだ。ご冥福をお祈りしたい」と述べ、広域農道の崩落について、再発防止に向け地すべりや地盤工学の研究者や建築士などで構成する調査委員会を早急に立ち上げ、被害状況の確認や原因の分析を行うと発表した。