ハゼの原木を発見 紀美野の特産を保護へ
音楽や演劇、美術などを学習カリキュラムの中心にしているりら創造芸術高校(和歌山県紀美野町真国宮、山上範子校長)の生徒らが、このほど地域の特性を学ぶフィールドワークを通し、かつて同町で栽培が盛んだったハゼの木の原木を発見した。県や地域住民らは、発見された貴重な天然記念物を「地域の宝」と捉え、地域振興の一助にしようと期待を込めている。
同校の鞍雄介教頭(36)が「地域デザイン」の授業として指導する生徒グループは、平成27年からブドウハゼの調査を始めた。きっかけは生徒らが、近隣で和ろうそくの原料となるハゼの木の生産を手掛ける高齢の生産者に出会ったこと。80代で5㍍以上の高さに育ったハゼの木に登り、軽やかな身のこなしで実を採取する姿に感銘を受け、聞き取り調査を進めた。
その中で、海南市でろうそくの製造を手掛ける吉田製蝋所から借りた「野上町誌」に「ブドウハゼの原木が松瀬地区にあり、昭和30年ごろに枯死した」との記述を発見。昭和8年以前には天然記念物「ブドウハゼの原木」として「和歌山県史跡名勝天然記念物調査会報告」に写真が掲載されていることも知った。
調査を開始した生徒グループはことし2月、同校から車で約15分ほど移動した山林で同報告書に掲載された写真と非常によく似たブドウハゼを発見。幹周りが158㌢あり、地上約30㌢の辺りで2枝に分かれている特徴が、同報告書に掲載された写真とよく似ていることを確認した。
10月には、県海草振興局農林振興課林務課の山下桃子さん(33)や、近隣の志賀野地区で地域活性化を図る「志賀野さみどり会」(藤垣成行会長)が視察に訪れた。
山下さんは、木の状態や生育環境については「良好だが、竹や棕櫚(シュロ)が生い茂って陽光が十分に当たらないので周囲の整備が必要です」、生徒の学習が発見につながったことについては「調査に意欲的に取り組んでいるところが素晴らしいと思います」と話していた。
鞍教頭は今後の取り組みについて「生徒らが発見したこの原木が地域の宝になったらうれしい。学校と地域が連携して貴重な木を枯らさないよう、守っていきたい」と話している。