沙也可の朗読劇を披露 平松さん福祉施設で

 約420年前、豊臣秀吉の朝鮮出兵に「大義なし」とし、朝鮮軍に加わって共に戦った沙也可(さやか)の半生を描いた朗読劇「沙也可の見た空~雑賀孫市郎とその仲間達」が和歌山県和歌山市直川の児童養護施設こばと学園で上演された。小学校4年生から高校生まで約30人の他、地域住民ら計50人が声だけで演じられる迫力ある物語を楽しんだ。

 同市出身で、東京の脚本家・演出家の平松豊司さん(54)率いる「平松組」の8人が出演。平松さんは5年前から毎年母校の川永小学校など地元を訪れ、沙也可を題材にした朗読劇を上演している。

 朗読劇は、平松さんが「雑賀衆・沙也可で街おこしの会」(辻健会長)発行の小冊子を目にしたことをきっかけに、多くの人に伝えようとセミフィクションに仕上げたもの。沙也可は、鉄砲集団の雑賀集を率いた雑賀孫市の嫡男、雑賀孫市郎という説が最も有力とされている。

 同作は祖国への複雑な思いや藤を抱く沙也可と、朝鮮の人々とのふれあい、国境を超えた人間愛を壮大なスケールで表現。キーボード演奏やさまざまな機材を使った効果音も盛り込まれ、子どもたちは一人で何役も声で演じ分ける朗読劇に息をのむように見入っていた。

 平松さんは「沙也可のように、どんなときでも強い信念を持つことが大切。続けていればいいことがある。皆さんもやりたいことを見つけたら、そこに向かって真っすぐに頑張ってください」とメッセージ。劇を見た女の子は「最近は歴史のお話を読むのが大好きなので楽しかった。いろんな音がまじって、迫力があってすごいと思った」と笑顔で話していた。

 公演は同市楠本の養護(盲)老人ホーム喜望園でも行われた。

臨場感たっぷりに朗読劇を披露するメンバー

臨場感たっぷりに朗読劇を披露するメンバー