腎臓病患者に好評 「低たんぱくパン」

 たんぱく質の摂取を控えなければいけない腎臓病患者のために、 和歌山市狐島でパン屋 「ブレッドハウスピノキオ」 を経営する㈲下津フードサービスは、 時間がたっても柔らかい 「低たんぱくパン」 を作る技術を開発した。 一般的なたんぱく質を抑えたパンは米粉を使っているため、 時間がたつと固くなってしまうという。 同店で12月から販売を始めたところ、 早くも患者らに好評で、 現在は一日約300個を完売するほどの売れ行きという。

 社長の笠畑幸荘さん (57) は昨年11月、 市内の病院から 「患者のために、 たんぱく質を抑えた食べやすいパンを作ってほしい」 と依頼を受けた。
 笠畑さんは、 小麦粉に含まれるたんぱく質成分のグルテンが入っていない素材 「小麦でん粉」 に着眼。 小麦粉を使ったパンは、 生地の発酵で発生するガスを、 粘り気のあるグルテンでためることで生地を膨らませる。 グルテンがなければガスを逃してしまうため、 生地を膨らませることは難しいという。

 笠畑さんは、 小麦でん粉と、 パン生地を発酵させるイースト菌を合わせ、 生地のこね方や寝かせ方を工夫することで、 グルテンがない状態でも生地を膨らませることに成功。 約1年かけて苦労を実らせた。

 もともと笠畑さんがパン作りで関係のあった、 県工業技術センター (同市小倉) も、 たんぱく質の含有量の測定などでサポートした。

 同パンのシリーズは、 腎臓を意味する英語 「キドニー」 とかけて 「紀路兄(きどにい)さんシリーズ」 と命名。 現在、 食パン6枚切りを2枚1セット、 ブルーベリーのジャムを練り込んだもの2個1セットの2種類を販売。 今後、 梅ジャムを練り込んだものなど商品開発を進める方針という。

 笠畑さんは 「このパンを作ったことで、 腎臓病を患う人がこんなに多いのかと驚きました。 パンでたんぱく質を抑えられるため、 他の食材でたんぱく質が取れるという話も聞きます。 患者さんが 『パンを食べる喜びができた』 と言ってくれることがうれしい」 と話している。

 問い合わせは同社 (℡073・452・7733) へ。