生化学者・泊幸秀さんに「日本学術振興会賞
紀の川市生まれの生化学者・泊幸秀(とまり・ゆきひで)さん(36)=東京大学分子細胞生物学研究所准教授=が、 研究 「小分子RNA(リボ核酸)がはたらく分子基盤の解明とその応用」 で、 本年度日本学術振興会賞を受賞した。 独立行政法人日本学術振興会(安西祐一郎理事長)が人文・社会・自然の全科学分野で独創的、 先駆的な優れた研究を進めている45歳未満の若手研究者に贈る賞で、 全国の学術研究機関が推薦した348人から24人が選ばれた。
泊さんは智弁和歌山高校から東京大学工学部に進み、 同大大学院博士課程修了。 マサチューセッツ州立大学医学部博士研究員などを経て現職。 平成22年には文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞し、 昨年度の県文化奨励賞も受賞している。
研究テーマは細胞の中にある 「小さなRNA」 の作用機能の解明。 RNAは、 DNAに書かれたタンパク質遺伝情報の設計図をコピーする役割があるが、 この 「小さなRNA」 は設計図としては働かず、 タンパク質の根源的な遺伝情報の流れそのものを絶妙に調節し、 がんなどさまざまな病気に密接に関連していることが明らかになってきた。
泊さんはこの 「小さなRNAの作用実体を担うタンパク質複合体(RISC複合体)」 に着目。 「オーソドックスでかつ独創的な生化学的方法論を導入し、 RISC複合体を構成する分子群、 その形成過程や生物学的役割などを次々と明らかにした。 その成果は医学や農学分野へも波及することが予想される」 ことが受賞理由となった。
泊さんの話 受賞は、 ずっと一緒に研究を行ってきてくれている研究室の学生や研究員の皆さんの努力の成果であり、 彼ら一人ひとりを代表する気持ちで大変光栄に思います。
私たち基礎生物学者の研究は、 「生き物が生きる仕組み」 というあまりにも大きなパズルを、 一つひとつ手作業ではめていくような地道なものであり、 あしたすぐに病気の治療に適用できるようなものではありません。 しかしそのような土台があって初めて新しい応用研究が可能となるのも事実です。 この名誉に恥じぬよう、 今後も一歩一歩研究を重ねてまいりたい。