来年秋の開催へ実行委始動 きのくに音楽祭

 県民参加型の音楽祭「きのくに音楽祭」が、来年秋に和歌山県和歌山市内で初めて開かれることになり、実行委員会が発足した。同市出身、東京藝術大学の学長で、県立図書館メディア・アート・ホール音楽監督の澤和樹さんが総監督を務め、洋楽と邦楽を軸に地元ゆかりの演奏家らが質の高い音楽を届ける。南葵音楽文庫を活用し、地元の子どもたち参加の演奏会なども企画。実行委では「普段あまり音楽を聴かないという人にも、気軽に足を運んでもらえるような音楽祭にしたい」と意気込んでいる。

 音楽祭は実行委と県立図書館が共同で開催。同館の音楽ホールではこれまで演奏会を重ね、世界的な演奏家を招いたコンサートの開催など、芸術文化の拠点施設として定着してきた。おととしには、紀伊徳川家16代当主の徳川頼貞が収集した西洋音楽関係のコレクション「南葵音楽文庫」が県に寄託され、昨年から館内で公開が始まったこともあり、世界に誇る遺産を広く発信しようと音楽祭の開催を決めた。実行委によると音楽祭は全国各地で行われているが、クラシックやジャズに特化したものが多く、洋楽と邦楽の音楽祭は珍しいという。

 実行委のメンバーは音楽関係者だけでなく、建築家やまちづくりに関わる14人で構成。和歌山市交響楽団の理事・髙橋功二さんが実行委員長、ピアニストの宮下直子さん、筝曲家の西陽子さんがチーフプロデューサーを務める。

 17日に同館で行われた会見で、澤さんは「皆さんに『参加したい』と思ってもらえるような音楽祭にしたい。小さなものから育てていければ」、髙橋さんは「お祭りではなく、『小さく生んで大きく育てる』を合言葉に5年、10年と続けて文化にしたい」と意欲を見せた。

 第1回の総合プロデューサーを務める西さんは「まずは音楽祭を育てるための種まき。音楽を通じて、人がつながる交流の場になれば」と抱負。南葵音楽文庫の発信が大きな目玉でもあり、宮下さんは「世の中に一度も音が出ていない素晴らしい作品も眠っており、ぜひ和歌山で音にしたい。世界初演になるかもしれない、そんな貴重な演奏会も企画したいですね」と話していた。

 第1回の開催は2019年10月4日から6日までの3日間。同館や和歌山城、和歌浦の施設などを会場に、県出身者や、ゆかりの演奏家を中心に出演。著名な演奏家のワークショップや寺社への奉納演奏、キャラバン隊を結成し、高齢者や障害のある人のもとに出向いた演奏も検討している。

 実行委では今後、出演者の調整やボランティアの募集などを行う予定。

きのくに音楽祭をPRする実行委の髙橋さん、宮下さん、澤さん、西さん(左から)

きのくに音楽祭をPRする実行委の髙橋さん、宮下さん、澤さん、西さん(左から)