金剛峯寺の法華経が重文に 文化審が答申
国の文化審議会(馬渕明子会長)は、高野町の高野山金剛峯寺が所有する経典「紺紙金字法華経(こんしきんじほけきょう)」8巻などを重要文化財(美術工芸品)に指定し、有田市糸我町の伊藤家住宅、御坊市薗の笹野家住宅の7件を、国登録有形文化財(建造物)に登録するよう、文部科学大臣に答申した。これにより、県内の重要文化財(美術工芸品)は309件、国登録有形文化財(建造物)は76カ所221件になる。
紺紙金字法華経は、1081年6月に高麗国の「金山寺」(現在の韓国慶尚北道の寺と推定)の成元という人物が書写させた法華経。高麗時代の朝鮮半島で書かれた「高麗経」としては現存する中で2番目に古いという。
金剛峯寺所有の国宝『又続(ゆうぞく)宝簡集』の記載から、1735年以前に高野山に伝来していたことが分かる。伝来の時期が確かで、仏教史の研究上極めて貴重な資料であると評価された。
伊藤家住宅は、主屋、土蔵、納屋の3件が登録された。伊藤家は有田川の南に位置するミカン農家で、紀州のミカン生産は同家が始めたとされている。いずれの建物も伝統的な造りをしており、当地の地場産業と密接に結び付いた建造物であると評価された。
笹野家住宅の登録は、主屋、離座敷、土蔵、表門および塀の4件。笹野家は印南町で酒造業を営んでいたが、安政の大地震(1854)で被災し、大正期に当地へ移住。主屋をはじめ昭和前期に建てられた屋敷全体が良好に保存され、御坊における上質な近代和風住宅の一つとして歴史的景観に大きく寄与すると認められた。