中畑さん内閣総理大臣賞 交通安全ポスター

 青信号が点滅し、横断しようとする高齢者に「待った」をかける大きな手のひら――。ことし使われる「交通安全ポスターデザイン」(全日本交通安全協会など主催)の一般部門B(歩行者・自転車利用者向け)で、和歌山県和歌山市梅原のイラストレーター、中畑康代さん(58)の作品が最優秀賞にあたる内閣総理大臣賞に輝いた。同賞を受けたのは、おととしに続いて3度目。別の作品も佳作に選ばれダブル受賞となった。

 人の服装や色もシンプルに、余計なものを取り除いた結果たどりついた表現で「いかに最低限で最大の訴えができるか。『これ以上無駄なものはない』と思うまでそぎ落としたのが良かったのかも」と振り返る。

 ポスターには標語を入れるのが決まりで、同部門のことしの言葉は「行けるはず まだ渡れるは もう危険」。11月に標語が全国紙で発表されてから制作にかかり、これまで以上に標語の意図をじっくりと読み込み、デザインを熟考したという。

 中畑さんはかつてテレビ和歌山に勤め、CM制作や番組ロゴ、キャラクターデザイン、法廷スケッチなどさまざまな仕事を経験した。現在は自宅にデザイン事務所を開設し、ロゴマークやイラストなどを制作。デザイン工房・陶ギャラリー「つくりん房」を主宰し、ものづくりを楽しんでいる。

 「標語を基に、いかに自分の持ち味を出しながらどうビジュアルで表現するか。頭の体操みたいで、考えるのが楽しくて仕方ない」とにっこり。2006年の初応募以来、応募がライフスタイルのようになっているという。

 これまではほのぼのとした雰囲気のものが多く、赤色の大きな手はインパクトが強過ぎるのではと不安もあったというが「過信している高齢者の横断を止めるには、このぐらいでないと伝わらない」と挑戦する思いで仕上げた。

 中畑さんは受賞歴が多く、手掛けたさまざまなキャラクターが、まちなかで活躍。先日、県内の新1年生に配られたランドセルカバーのパンダの絵柄や、「とびだしちゅうい!」の看板も、県交通安全協会からの依頼でデザインしたもの。

 中畑さんは「今まで周囲に育ててもらったぶん、地域や社会に還元できれば。ポスターを通じて交通事故が少しでもなくなればうれしい。これからもデザインに限らず、自分の思っていることをいろんなかたちで表現していきたいですね」と笑顔で話している。

内閣総理大臣賞に輝いたデザインを手に中畑さん

内閣総理大臣賞に輝いたデザインを手に中畑さん