停電や建物の横転も 台風20号県内に爪痕

 強い台風20号は23日夜から24日未明にかけて県に最接近し、県内全域が激しい雨と風に見舞われた。県や関西電力によると和歌山市や海南市、紀美野町など県内全域の延べ約8万1600軒で一時停電が発生。和歌山市の友ヶ島で最大瞬間風速52・3㍍(23日午後11時2分)を記録した。市内では強風によって地蔵尊の祠(ほこら)が倒れるなどの被害が出た。田辺市で50代の女性が風にあおられて転倒、有田市の50代の女性が転倒して胸部打撲、美浜町の71歳の女性が風圧で転倒し、いずれも軽傷を負った。

 海南市や紀美野町に土砂災害警戒情報が出され、自治体は防災無線やメールなどで早めの避難を呼び掛けた。

 交通機関も大きく乱れ、JR西日本は、きのくに線(和歌山―新宮駅間)で倒木被害が発生。紀伊田辺―串本駅間で運転を見合わせ、24日午後1時30分現在、運転再開のめどは立っていない。

 普通列車は和歌山線(五条―和歌山駅)、紀勢本線(和歌山―和歌山市駅)で24日始発から運転を見合わせていたが、午前11時3分以降順次運転を再開した。

 南海電鉄は23日夜から本線と加太線で合わせて42本が運休。本線で最大128分、加太線で最大10分の遅れが発生した。特急サザンは午後7時40分発が最終となり、以降午後10時49分の列車から断続的に運休。加太線では午後11時以降運休となった。

 24日は本線で始発から運行。4分の遅れが発生した。加太線は2本運休し、午前5時26分発の下り列車から運行を再開した。

 和歌山電鐵は24日貴志駅の始発から上下で計4本、運休・区間運休したが、午前6時14分には通常運転を再開。114人の乗客に影響した。

 和歌山港と徳島港を結ぶ南海フェリーは24日上下第8便まで欠航し、第9便から運航を再開した。

中橋地蔵尊の祠倒れる

 暴風により、和歌山市福町の市堀川に架かる中橋の隣にある中橋地蔵尊の祠が横転した。

 地蔵を管理する高野山金剛講和歌山地方本部正寿院正寿講支部によると、午前6時ごろに散歩中の人から連絡があり、地蔵を見に行くと祠が屋根を下にして倒れ、中の地蔵も台座ごと倒れて外に放り出されていたという。そばにあった倉庫も倒れ、中のものが外に出ていた。

 さい銭を盗まれることや、故意に地蔵を倒されたことはこれまでにあったが、自然災害で壊れてしまったのは地蔵の管理を始めてからは初めてという。

 現在の祠は撤去し、来月中ごろには新しい祠を造ることを検討。同支部は「祠が倒れて道路に飛び出すことがなくて良かった。お地蔵さんが踏ん張って引き留めてくれていたのでは」と話していた。

 本紙エリアのその他の主な被害、避難状況は次の通り。

 【和歌山市】三田や安原、名草地区などに避難勧告が出され、小学校や支所、連絡所など32カ所に最大79世帯119人が自主避難した。約4230件が一時停電。地域は磯の浦、伊太祈曽、大河内、加太、北島、狐島、木ノ本、栗栖、黒岩、栄谷、山東中、出島、松江東1丁目、松島、湊、湊1丁目~5丁目、南畑。

 【岩出市】54世帯65人が市内の公民館や市民総合体育館、市総合保健福祉センターなどに一時避難した。24日午前8時15分には住民が帰宅した。

 【紀の川市】8世帯19人が市役所や中学校などに一時避難したが、24日午前5時56分に最後の避難者が帰宅した。

 【海南市】日方川、亀の川、貴志川、加茂川の4河川の流域を対象に「避難準備・高齢者避難開始」を発令。開設された18カ所の避難所に最大で66人が自主避難した。

 強風による飛来物で鳥居地区の住宅1軒のガラスが割れ、日方地区の2軒の民家のトタン屋根が飛ぶ被害があった。約550軒で停電があり、大野中、幡川、山田、下津町興、笠畑、引尾、百垣内の7地域。

 【紀美野町】動木で小さなトタン屋根が飛んだという報告があったが、人的、建物の甚大な被害情報は寄せられていない。約3070件で停電が発生。赤木、上ケ井、井堰、梅本、大角、奥佐々、鎌滝、神野市場、坂本、下佐々、谷、津川、中田、永谷、野中、花野原、東野、樋下、福井、福田、真国宮、松瀬、三尾川、南畑、蓑垣内、蓑津呂、明添、箕六、吉野の29地域。

祠が倒れた中橋地蔵尊

祠が倒れた中橋地蔵尊