中筋さん、新家さんも入賞 二科会写真部展

「第66回二科会写真部展」では、協賛企業賞のセコニック賞に和歌山県和歌山市朝日の中筋孝さん(69)、ダイコロ賞に有田川町西ヶ峯の新家益代さん(67)が選ばれた。入賞は全国でも63作品という狭き門。最高賞の二科賞に選ばれた平松さんを含め、3人は写真家の照井四郎さんが主宰する写真ツアー「熊野写真塾」で撮影した写真で評価を受けた。照井さんも「こんなことは、そうないこと。宝くじで高額当選するようなもの」と驚いている。

中筋さんの「熊野の夜明け」は、三重県熊野市の七里御浜に広がる冬の風物詩、サンマの丸干しを超広角レンズで写した迫力ある一枚。おととしの12月末、寒風に凍えながら、朝の5時ごろからローアングルで三脚を構えて待った。向かいにうっすらと朝日が昇る頃、偶然駆け抜けるランナーの姿とともに収めた。薄暗い中ピント合わせに気を配り、特に魚の力強い目と、体の表面の質感が伝わるよう心掛けたという。

6度目の出品で、初の入賞。「ようやく人とは少し違う視点を持てるようになってきたかな、という感じ。まだまだひよっこで、『頑張らな』と思います」。

60歳で定年退職後、もともと興味のあったカメラを始めた。時間つぶしにと始めたが、奥深い写真の世界に魅せられ、今では生活の一部に。県内の各地域で行われる小さな祭りに出掛け、高野山に毎月のように通ってはシャッターチャンスを狙う。

「気を引き締めて、これからも祭りや高野山の行事、地元の被写体を追い続けたい。今まで出品は二科展ばかりでしたが、他の公募展にもどんどん挑戦したいですね」と思いを新たにしている。

セコニック賞に選ばれた「熊野の夜明け」

セコニック賞に選ばれた「熊野の夜明け」

新家さんの受賞作「村の色」は、古座川町や本宮町などで撮影した3枚の組写真。山奥の民家の軒先で風に揺れるハンガーや、一人暮らしの高齢男性宅で、几帳面に掛けられたヤカンやじょうろなどを写した。

墓石そばの水くみ場では、バケツやひしゃくがつるされているのが目に留まり「きれいに掃除し、お墓を大切にしているのが伝わってきました」と振り返る。

受賞の知らせに「昨年は入選すらしなかったので、うれしくて、その夜は眠れなかったほど」と喜びいっぱい。10年ほど前にフィルムカメラを始め、いったん離れた時期もあったが、時間に余裕ができた3、4年前から再び趣味にするようになった。

撮影するのは祭りや人々の暮らしが多く、自然豊かな熊野古道を歩くのが大好き。訪れる先々で一番感じるのは、人の優しさや温かさ。「どこから来たん?」「何か飲んでいき」――。人との出会いが楽しく、さまざまな話を聞くことで心が癒やされるという。

高齢化が進む集落では、地域の風習や祭りなどが継承されにくいことに寂しさもあり「これからも熊野を撮りたい。生活感が伝わるようなものや、失われつつある文化を写真で残していきたいです」と笑顔で話している。

ダイコロ賞に選ばれた「村の色」

ダイコロ賞に選ばれた「村の色」