西条藩を知る(7)江戸中期から続く豊かな水文化
前号では、西条市の街中で自噴する井戸「うちぬき」の仕組みと歴史について紹介した。江戸中期に広まったとされる「うちぬき」は今もなお市民の生活に取り入れられている。今週は、水の都・西条市ならではの水文化を紹介したい。
合併前の旧西条市(西条陣屋を中心に、伊予西条駅周辺)において、うちぬきは、各家庭に引き込まれ、蛇口をひねれば地下水が出るというのが一般的。定期的な検査による安全確認は欠かせないが、飲み水としても利用できる。常に新鮮でおいしい水を、それも無料で利用できるという仕組みで、これらの地域においては上水道の計画外区域となっており、公共の上水道が提供されていない。江戸中期から続くうちぬきを活用した生活様式が現代にも受け継がれているのである。
気になるのは下水道の整備。新鮮な地下水を守るためにも下水道は欠かせない存在であり、こちらについては整備がされている。一般的に下水道の料金は上水道のメーターに基づき計算されるが、下水道のみの契約が一般的な旧西条市エリアにおいては、世帯当たりの居住者数に応じた使用料金の設定となっている。2カ月おきの納付で、1人世帯では1280円、2人世帯では2640円、3人世帯では4080円といった具合で、1カ月当たりに換算すれば1人当たり600円台という料金。
しかし、近年、地下水に海水が混ざり込む塩害化や水質汚染により簡易水道の整備が行われることもあるという。
うちぬきは、伊予西条藩8代藩主の松平頼学(よりさと)が儒学者に指示し編さんさせた『西條誌』にも紹介されるほど、この地域を語るうえで重要な存在。全国的にみてもまれな水文化がいつまでも継承されることを祈りたい。
(次田尚弘/西条市)