來生学長が記念講演 放送大学和歌山20年
放送大学和歌山学習センター(和歌山県和歌山市西高松)の開設20周年を記念した講演会が7日、同センターが入る松下会館で行われ、來生新学長が「日本人と海―日本は真の海洋国家足りうるか―」のテーマで話した。
同センターは1998年開設。センターでの学習の他、和歌浦や高野山などでの面接授業(フィールドワーク)、和歌山大学との単位互換制度の協定締結などにも取り組み、これまでに638人が卒業している。
來生学長は日本とイギリスが同じ島国でありながら、海に出て世界で活躍したイギリスと、積極的に渡航しなかった日本を比較し、海洋国家としての日本の歴史を振り返った。
日本は中世に慶長遣欧使節団の派遣や朝鮮出兵、東南アジアの日本人町など、大航海時代に合わせるように海外志向が高まったが、徳川幕府が鎖国したことで外交が制限された。貿易商人を中心に形成された日本人町は朱印船貿易で栄えたが、鎖国後は急速に衰えた。
明治以降、日清、日露戦争に勝利した日本は海外進出を強め、韓国を併合し、大東亜共栄圏を唱えるようになり、第二次世界大戦に参戦するが、敗北により挫折した。
來生学長は、この歴史を海洋国家の2度の挫折とし、「3度目の正直が今来ている」と話した。沿岸国の管轄権の拡大と大陸棚の延伸により、現在の日本の排他的経済水域は世界6位。離島も広がり、石油やメタンハイドレートの開発も計画されている。來生学長は、海を広大なフロンティアとして植民地支配のない海洋国家の展開に期待を寄せた。