農業アシストスーツを開発 八木和大名誉教授
和歌山大学名誉教授の八木栄一さん(69)が代表を務める大学発ベンチャー「パワーアシストインターナショナル㈱」(和歌山県和歌山市)が15日、農作業で腰にかかる負担を軽減する「パワーアシストスーツ」を発売した。装着することで、重い荷物の上げ下ろしや長時間の中腰作業などの姿勢を支える。「年をとっても長く元気に働き続けたい」という農業者の願いに応えた。
民間企業で産業用ロボットのシステム開発に取り組み、2005年に同大システム工学部の教授に着任。大学で行う研究として、「10年先に役立つロボットは何か」を模索していた。
「高齢になり腰痛があるが、長く仕事を続けたい。支援してくれるものを作ってほしい」。あるとき、米農家が研究室に頼みに来た。和歌山は農業に従事する人が多いが、肉体的負担から腰を患う人が少なくない。少子高齢化で担い手不足も深刻だ。工場などで生産効率を高め、人を排除してしまうようなロボットではなく、「人と共存し、力を支援するようなロボットを作ろう」と考えた。
10年に第1弾として開発した試作品は、40㌔の重さになった。これでは実用性に欠ける。「腰のアシスト」に焦点を絞り、フレームの材質を変えたりモーターを軽くしたりして軽量化に努め、4・7㌔にまで抑えることに成功した。
発売したスーツは、歩行、荷物の上げ・下げ、中腰作業の四つの動作を1体で支えられるのが特長だ。センサーが体の動きを感知し、5~12㌔の力で支援。人の動きを妨げず、深くしゃがみ込む姿勢にも対応できる。
試作段階では、ミカン農家だけでなく米や梅、柿農家などさまざまな農作業現場に足を運び、農家の人に試着してもらった。「本当に必要としている人の意見を聴いて開発できたのが良かった」と振り返る。
当初は農業用に開発したが、力仕事が求められる介護や物流、建設など幅広い分野で活用できる。八木さんは「今後も改良を重ね、人の気持ちまで感じ取れるような『さらに人に優しい』製品を目指したい」と話している。
価格は税別100万円。中腰姿勢に特化したスーツ(同60万円)もある。問い合わせは同社(℡073・488・3211)。