桐蔭8年ぶり全国優勝 缶サット世界大会へ
高校生が空き缶で自作した模擬人工衛星(缶サット)を打ち上げて技術力を競う「缶サット甲子園全国大会」が7日、和歌山市のコスモパーク加太で開かれ、全国10校が出場する中、和歌山県立桐蔭高校科学部缶サット班が8年ぶり2回目の優勝を果たした。缶サット班は来年6月にヨーロッパで開かれる世界大会に出場する。
缶サットには各チームが考えたミッションに基づいてセンサーやカメラを搭載し、モデルロケットで打ち上げてターゲットの撮影やデータ収集を行う。さらにデータを基にミッションについてプレゼンテーションし、技術力や創造力を競う。
桐蔭のミッションは「小型探査機による天体の環境調査」。地球外環境を調査するのに適した缶サットを目指し、小型化により地球上の洞窟探索などにも導入できる期待を示した。
大会当日は朝から各校が機体の審査を受け、打ち上げへ。桐蔭も滞りなく審査を終え、6番目に打ち上げを迎えた。生徒は打ち上げ場所に缶サットを載せたロケットをセット。打ち上げられたロケットは空高く飛び、放出された缶サットはパラシュートで舞いながら無事に着地した。
今回は、土壌採取機構と大気、紫外線を検知するセンサーを搭載。土壌採取の機構は3Dプリンターで作製。落下を検知すると缶サットから粘着棒が伸び、地面に接触させて採取する仕組み。成功率を上げるため、衝撃吸収材に傾斜をつけて一定方向に缶サットが倒れるようにし、補助採取機構も取り付けた。
本番では草の上で缶サットがバウンドしたが、補助機構で採取に成功。ただ、得られたサンプルが少なく、分析まではできなかった。気体センサーでは、アンモニアや二酸化炭素など8種類の気体を検知。紫外線センサーとともに生命活動ができる環境かを調査した。
また、無線でのデータ受信中にノイズにより生まれる不完全データを破棄し、受信データをリアルタイムでグラフ化。通信の成功率は目標の50%には届かなかったが、38・8%で昨年の優勝校を上回り、後に缶サットから回収したデータと同じグラフができた。
また、気圧センサーが風の影響を受けないようにメラミン製スポンジを巻き付けるなど昨年大会で受けたアドバイスも反映。打ち上げのモデルロケットは画用紙と竹ひごで軽量化。地方大会で直面した重心の問題も解決した。また、缶サットの層が増えたことでパラシュートの収納部分確保のためにロケットの直径を広くした。
大会を終え、缶サット班長の2年生、山下匠君(17)は「8年ぶりに優勝できてうれしい。地元開催という縁と、前日まで準備できたことが要因だと思う。世界大会ではロケットのサイズが大きくなり、缶サットに掛かる負担も大きくなるので、その部分を見直していきたい」と話していた。