聴覚障害者向け老人ホーム 県内初オープン
耳が不自由な人向けの住宅型有料老人ホーム「きのくにの手」の開所式が1日、和歌山県和歌山市加納で行われた。聴覚障害者を対象にした高齢者施設は県内で初めて。運営する県聴覚障害者協会(福田美枝子会長)は「手話で自由に会話し、安心して暮らせる場所でありたい」としている。
同協会によると、聴覚障害者が一般の高齢者施設に入っても、耳の聞こえる他の入所者や職員とコミュニケーションが取りづらく、孤立するケースが多いという。同協会は2015年から、老人ホーム建設を目指し募金活動を開始。土地の寄付や集まった募金約1億434万円などを元に建設が実現した。
「きのくにの手」は2階建てで、敷地面積は1404平方㍍。定員は26人で、手話が理解できる職員を配置する。
館内は「利用者が視覚で理解できる」仕様にこだわった。来客や食事などを音やアナウンスの代わりに光や振動で伝える機器や、地震や避難情報などを手話映像で伝える聴覚障害者向けの情報受信装置などを備えている。中央は吹き抜けのホールになっており、上下階でも手話で会話できるよう配慮した。設計した「RYO設計」(同市木広町)の松本良二所長は「聴覚障害の設備に関しては日本有数の施設となっている。安心して入居いただける」と胸を張った。
開所式には福田会長をはじめ尾花正啓市長、ヤマイチエステート㈱の山田茂代表取締役社長ら関係者が出席。福田会長は「ホーム建設は20年以上にわたる私たちの願いだった。土地もお金もないところからスタートし、ここまで来られたのは皆さんのご支援のおかげ」と感謝した。
問い合わせは同施設(FAX073・474・0020)。