特別支援教育の推進へ 県内100年で講演

和歌山県内で特別支援教育が始まってことしで100年の節目を記念し、県障害児教育振興会などは9日、「社会参加と自立・理解推進講演会」を海南市日方の保健福祉センターで開いた。教育や行政関係者、保護者ら約120人が参加し、視覚障害がある教諭の実践発表や、100年の歴史を振り返るパネルディスカッションなどに耳を傾けた。

1918年、県内初の障害のある子どもたちのための公立教育機関「県立盲唖学校」が創立。講演会の冒頭で宮下和己県教育長は「創立101年目をどう迎えるのか、さらに10~50年先を見据え、特別支援教育がどうあるべきかを考えることが大切だ」とあいさつした。

実践発表では、橋本市立隅田中学校の大前雅司教諭(33)が「10年たった今思うこと」と題して話した。視覚障害がある大前教諭は、担当の社会科の授業で黒板の代わりにモニターを使用。表示する内容は、大前教諭が立てた授業計画を基に同僚が作成し、教科書の点字翻訳は関係団体が担当していることなどを紹介し、「多くの人に支えられています」と感謝の思いを話した。

さらに、自身が経験してきた心の葛藤を基に生徒に語り掛けているとし、「教室に入りにくいなど、さまざまな悩みを抱える生徒の心にストンと響く言葉を伝えていきたい」と話した。

パネルディスカッションは、特別支援学校の元校長や学識経験者らが登壇。県がこれまで進めてきた特別支援教育について、パソコンを駆使した情報教育、低年齢からの早期教育、教育相談などに全国でも先駆的に取り組んできたことが紹介され、今後は、福祉行政が障害者の社会参加を促進することが必要などの意見が出された。

この他、文部科学省特別支援教育調査官の青木隆一さんによる基調講演「我が国の特別支援教育の現状と今後」も行われた。

実践発表をする大前教諭

実践発表をする大前教諭