新発見の縁起絵巻も 県博で熊野と和歌浦展
景勝地として知られる熊野と和歌浦を描いた作品を集めた企画展「熊野と和歌浦―きのくにの名所をたずねて」が20日まで、県立博物館(和歌山市吹上)で開かれている。このほど新たに確認された絵巻も初公開。同館の竹中康彦学芸課長は「地元の人にとってなじみ深い場所ですが、新しい発見をしてもらえるはず。古くから人々を魅了してきた熊野と和歌浦に関心を持ち続けてもらえれば」と話している。
江戸時代のびょうぶや掛け軸を中心に29点を展示。このうち、熊野の神々の成立を物語る「熊野権現縁起絵巻」全3巻の異本は初公開。天竺(てんじく=インド)の王や后(きさき)、王子たちが日本に飛来し、熊野の神々になる物語を描いている。昨年の夏、他府県に住む個人から寄託された。
肉筆で全3巻が全て残る作例は全国で数点しか確認されておらず、かなり貴重な資料。熊野三山を参拝する熊野詣でを広める目的で描かれたとされ、和歌浦や南部、田辺などの熊野参詣道沿いを神々がたどったとされているのが興味深いという。
和歌浦を描いたびょうぶは、名所絵として観念的に描いたものや、実際に見た風景を忠実に表現したものを展示。江戸時代から近代にかけて、さまざまな絵師によって描かれ、このほど行われた展示解説では、竹中学芸課長が「正確に描かれたびょうぶは、現在の地形と符号し対比して楽しめる」と解説。『万葉集』の山部赤人ゆかりのツルや、布引の松が和歌浦の重要な要素として描かれていることを紹介した。
その他、紀州の三大文人画家として知られる、桑山玉洲や野呂介石が描いた那智の滝の掛け軸も並ぶ。ミュージアムトーク(学芸員による展示解説)は13日、19日のいずれも午後1時半から。問い合わせは同館(℡073・436・8670)。