鈴木屋敷復元の成功願い ゆかりの謡曲奉納
全国に約200万人いるとされる鈴木姓のルーツ・和歌山県海南市の藤白神社境内にある「鈴木屋敷」復元へ機運を高めようと、東京の観世流能楽師・鈴木啓吾さんが10日、鈴木姓にちなんだ謡曲を同神社拝殿で奉納した。
鈴木屋敷は老朽化が進み、現在復元整備が進められている。鈴木啓吾さんは2016年に同地を訪ねて以来、屋敷の姿に心を痛め、復元の一助になればと、約300年上演されていなかった廃曲『語鈴木(かたりすずき)』を『鈴木三郎重家』として復曲。昨年3月、東京の国立能楽堂で上演した。
復元に向けては個人から寄付を募っている他、市では1月から企業版ふるさと納税制度を活用した寄付を呼び掛け、全国各地から「鈴木さん」をはじめとした寄付の申し出があるなど、関心が高まっている。
この日、鈴木さんは拝殿で謡曲「神歌」と「鈴木三郎重家」を朗々と謡い奉納。鈴木三郎重家は、源義経の家臣の一人。復曲された能は舞がほとんどなく語りが中心。頼朝に捕らわれた際にも主君・義経の正当性を語り、忠義を尽くす姿が描かれている。
奉納に続き、境内に設けられた舞台で、鈴木さんが義経に関係した仕舞「屋島」を披露。鈴木屋敷復元の会の役員8人も加わり「鈴木三郎重家」の謡曲の一部を連吟で披露した。
復元の会の神出勝治会長は「全国の『鈴木さん』に助けてもらい、今後3年をめどに何としてでも屋敷の復元、完成を祈念したい」と意気込み、鈴木さんは「拝殿での奉納は、身が引き締まる思いでした。地元ではあまり知られていない鈴木三郎重家を、もっと知ってもらいたい。今後は屋敷がどのように復元されるのか楽しみです」と話していた。