災害対応の人員配置を 台風19号が突きつけた教訓
一年が経つのは早いものでもう師走になりました。私も先般の内閣改造で国土交通大臣政務官の職責を担わせていただいてはや2カ月半が経過いたしました。この間、従来の政治活動に加え政府の一員としての仕事を担うこととなり、おかげさまで多忙な毎日を送らせていただいております。
特には前回もお伝えしましたとおり10月の台風19号による東日本を中心とした災害の対応に国土交通省の一員として携わることになりました。連日の対策会議に出席し政務の立場で対応等を進言してまいりました。その中で今回の災害で緊急を要したものは、人命の救出はもちろんのことですが河川の氾濫をどう迅速に応急的に止めるかということでした。ご想像のようにまたテレビの画面からもご覧になったように決壊した堤防からはどんどん水が氾濫し家屋や街そのものを飲み込んでいきます。この被害をできるだけ最小限に食い止めるには一分一秒でも早くその箇所を塞ぐこと、すなわち堤防を応急的に復旧させることが重要となります。
人命が失われるリスクがない限りは、道路や鉄道、土砂の崩落の現場は例えば明るくなってからでも、という具合に少しの時間的猶予が与えられます。しかし河川の氾濫はまさにその瞬間も上流域からどんどん水が押し寄せてきます。今回、国が直接管理している一級河川が12カ所決壊しました。また地方自治体が管理する河川ではなんと128カ所が決壊したわけです。併せて140カ所。ほぼ一日にしてこれほど広範にこのような災害が起こったのは史上初めて経験することでした。140カ所を同時に一刻も早く塞ぐ、この命題が私たち国土交通省の目の前にたたきつけられたのです。
事前に待機をしていました今回の被災地以外の地域、すなわち私たちの近畿や四国、そして北海道や九州など各地域の地方整備局からも応援体制が編成されそれぞれの決壊箇所にも派遣されました。このとき改めて国土交通省の総合力、機動力を頼もしく思いました。それと同時に地方の体制の脆弱さというものにも問題意識を抱きました。
前述の通り地方自治体管理の河川の決壊は実に128カ所にも及び、このような状況の中で地方から届けられた声は「決壊箇所を応急復旧させられる能力が地元にはない。すなわち対応できる職員も業者もいない。従って国が直接、出張ってきて工事を取り仕切ってくれないか」といういわゆるSOSでした。これほど地方が疲弊しているのかと改めて感じさせられました。これらの声を受け「直轄権限代行」という制度に基づき国、すなわち国土交通省は多くの地方管理の河川の応急復旧に当たることになりました。またこれは河川に限った話だけではなく結果的には道路や土砂災害においても同じような代行が数多く行われたわけです。
しかし、これからの災害対策を考えてみますと国土交通省の体力、能力にも物理的な限界があります。改革の美名のもとに人員は20パーセント削減されています。今回の災害を教訓にしてさまざまな価値観を変えていかなければなりません。中でも私はこの人員については特にこれまでの傾向を一度見直し、国と地方の役割分担という観点で整理しつつも必要なところには必要な人員を配置する。このことを喫緊の課題として解決しなければならないと感じています。
振り返ってみますと私たちのふるさと和歌山もいわゆる地方です。今回の災害を対岸の火事と思わず参考にすべき点は多々あると思います。今回の対応に当たって私が得られた教訓や経験をふるさとのお役に立てることができればとも思っています。自然災害に万全に備えるためにもみんなで考え知恵を出してしっかり備えていこうではありませんか。これからもしっかりがんばります。来年もよろしくお願いいたします。