「農は国の基なり」食糧自給率低下に警鐘 ―コロナ危機から活かす教訓―

政府が全国に緊急事態宣言を拡大して間もなく1カ月。この間、全国各地の医療現場ではまさに「命」を懸けた戦いが、連日連夜、不眠不休のごとく繰り広げられています。また、県内においても和歌山県庁をはじめ各自治体、保健所の職員の皆さま、介護・福祉事業関係者の皆さまが感染拡大防止に懸命の努力を積み重ねておられます。
本当に胸が熱くなる想いであります。自らの危険や恐怖を乗り越えながら、今、この時も国民や県民の「命」を守るべく奮闘いただいています。関係者に改めて深く敬意と感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。同時に、政治の責任として、全身全霊をかけて国民生活を守り、次の世代に素晴らしい故郷を引き継いでいくことを誓いたいと思います。
現下のコロナ危機は私たちの生活様式や価値観を世界規模で大きく覆しました。私たちはこの教訓を冷静に分析し、次の世代の新たなビジョンを創造していかなくてはなりません。
都市と地方の在り方について、首都圏の過度な一極集中は国が抱える大きなリスクであるということが明らかになる反面、最新技術を活用した、新しい働き方、医療・介護、教育・子育て等の在り方は、地方での豊かな暮らしの可能性を大いに示してくれています。
ものづくりの生産拠点は再考が必要です。本当に国内で生産しなければならない、品目と必用量を再点検しなければなりません。
大規模自然災害については、これまで私たちは「国土強靭化」を合言葉に、常に備える意識を高め、対策を講じてまいりましたが、感染症リスクを想定した避難施設の運営や備蓄物資の準備等は新たなテーマとして喫緊に取り組まなくてはなりません。
ひとりひとりが健康で長生きするというテーマも人類がこれまで長く追及してきましたが、今後はこれまで以上に、健康問題が脚光を浴び、新たなビジネスチャンスも生み出していくことになるでしょう。
他にも、さまざまな分野で大きく変わらなければならない問題はたくさんありますが、私がすぐにでも取り組まなければならないテーマとして、農業分野における「食糧自給率」の課題を提起しておきたいと思います。
わが国の食料自給率は1965年の73%(カロリーベース)をピークに2018年には37%まで低下し過去最低の水準にあります。中でも、小麦は12%、大豆はわずか6%です。また、近ごろ和牛が海外の消費者を中心に評価が高まっていますが、その餌となる飼料用穀物は25%しか国内で生産されていません。この問題は、以前から全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長(田辺市出身)が盛んに警鐘を鳴らしてこられましたが、図らずも今回のコロナ危機を受け、その指摘が近い将来の大きな危機として感じられるものとなりました。ひとたび、感染症が発生し貿易が遮断され、生産力が低下すれば、食糧の大半を輸入に頼っている日本は窮地に立たされます。
世界の人口はまだ伸び続けており、途上国の食糧事情は逼迫しています。これまで、日本に輸出している国々がこれからも同じように輸出してくれる保障はどこにもありません。国内の生産現場も高齢化が進み、外国人労働者を多く採用していますが、今年は来日が見込めず、作付けの低下が危惧されます。食糧危機と唱えても、実感が湧かないかもしれませんが、危機はすぐそこまで来ています。
「農は国の基なり」の精神を今一度かみしめ、食糧自給率向上策について関係者とともに取り組みたいと思います。