戦国時代の熊野の武士 県立博物館で特別展
熊野三山や熊野古道など〝聖地〟のイメージが強い紀南の熊野地方を、群雄割拠した武士たちに関する近年の調査・研究成果から新たな視点で見つめる和歌山県立博物館(和歌山市吹上)の特別展「戦乱のなかの熊野―紀南の武士と城館―」が、6月7日まで開かれている。城館の遺跡からの出土品や古文書など豊富な資料256点を見ることができる。
特別展は、14世紀終盤から徳川家の紀伊入国の17世紀初めまでの戦乱期を取り上げている。当時の熊野は、山本氏、小山氏、安宅氏、周参見氏、鵜殿氏、堀内氏など群雄が割拠する状態で、羽柴秀吉の紀州攻め(1585年)以降も大規模な一揆が起こるなど政情不安が続いた。
現在の地名に残る勢力など、身近な武士の存在や暮らしを知ることができる展示になっており、龍松山城跡(上富田町)、安宅氏城館跡(白浜町)、藤倉城跡(那智勝浦町)など各地の調査の成果を紹介している。
相次ぐ鉄砲玉の発見から、熊野の武士に鉄砲が普及していたことが分かり、ベトナム産と考えられる「四耳壺(しじこ)」なども見られることから、坂本亮太主査学芸員は「熊野が広く交易も行っていた地域であることも分かってきている」と話す。
紀州を領地とした秀吉の弟・秀長の書状をはじめ古文書類も見どころ。秀長による領地の認定、一揆の鎮圧を命じる文書などが見られる。
午前9時半から午後5時(入館は4時半)まで。月曜休館。問い合わせは同館(℡073・436・8670)。